第3話 片桐vs引きこもり?
「出てきなさい!貴方はサブキャラに包囲されています!」
「やめて勝手に開けないで」
「おーい片桐、その辺にしないと怒られるぞぉ」
「いいややめません鷲宮くん、私は今この社会に甘え怯えている同胞を助けるため必死なのです、邪魔しないでください!」
「……じゃ、邪魔なのはあんた」
鍵の開いたドア一枚を挟んで、開けようとする片桐vs閉めようする志賀さんのバトルが今繰り広げられていた。
はぁ、どうしてこんなことになったかなぁ。
「いい加減開けなさい!」
「そっちこそ帰れ!この変人」
ーー3日前
「ボランティア部の顧問を引き受ける条件として、とある生徒の勧誘をお前らに依頼する」
「とある生徒?」
「ああ、とある生徒だ、その子の勧誘を引き受けてくれるなら顧問の話を引き受けよう」
「やります!任せてください、この片桐全身全霊をかけて挑ませていただきます!」
てな具合で半ば安請け合いみたいな感じで引き受けちゃったけど、大丈夫かよこんなんで。
「い、いい加減開けないさい!」
「うっさい帰れ!」
結構ヒートアップしてきたし、この辺で一旦止めとくか。
「おーいお前ら、その辺にしておけよ」
『うっさいお前が一番いらないんだよ!』
「ひ、ひぃ」
なんだよ、どうしてそこだけハモるんだよ……。
仕方ないここは俺だけでもアドバイスを貰いに行くか。
「そんなわけで前田先生、何かアドバイスお願いします」
「なんだもうギブアップか?」
俺は依頼人である前田先生に詳しい話を聞くべく、片桐を志賀さんの家に置いて一足早く学校に戻った。
「いやギブアップっていうか、さすがにほぼ何も情報なしにあの引きこもりの相手は厳しいですよ」
「ほぉ、つまりギブアップか?」
「だから違うって言ってますよね!場所だけ知らされてそこで引きこもりを学校に呼んでこいって、無茶苦茶ですよ」
「ふふ、まぁ確かに無茶苦茶かもな、でもあの子を家から出すにはあの奇人が一番でな」
そう言って前田先生はニヤリと笑った。
いやめっちゃ喧嘩してるけどね二人とも。
見た感じ相性最悪だし、あそこから志賀さんが学校に来るなんて到底思えないんだけど……。
「とりあえず先生、志賀さんがなんでああなっただけでも教えてくれませんか?」
「いいだろう、特別だぞ」
前田先生はそう言って渾身のウインクをかましてきた。
や、やり辛え。
この感じどことなく片桐に似ている気がする……。
「志賀奈緒、今年の4月まぁ1ヶ月前にうちの高校に入ったばかりの新入生だ」
「は、はぁ」
「お前ら2年にとっては初の後輩だな」
「そ、そうですね」
いちいちいらん話を挟まんでいいから本題に入ってくれよ……。
「うむ、でな志賀さんは中学校でいじめに……」
「いじめになんですか?」
「あっていない」
「……なるほど」
おいなんだよ今の溜め、必要かその溜めは?
「おい!そこは"え!そうなんですか、てっきりいじめにあって学校に来れなくなったんだと思いました"だろ」
「いやそんな事言うかよ、そういう勘違いの仕方はまるで志賀さんがいじめられやすいみたいになるじゃんかよ!」
「ほぉ、いい奴だなお前」
「ど、どうも」
早く本題を聞かせてくれよ、そういういらん演出するのマジで片桐だけで間に合ってるんだよ。
ま、まぁ前田先生みたいな美人にいい奴とか褒められるとちょっと嬉しいけど。
「なんだお前その顔は、そこそこのイケメンフェイスが台無しだぞ」
「うるせぇ、早く本題聞かせろ」
「おいおい教師だぞ私は……まぁいい、志賀さんはな中学時代いじめにあっていたわけではないが、間近で友達がいじめられるのを見てしまって学校に来れなくなってしまったんだ」
なるほど、それは結構キツイかもな。
仲の良い友達がいじめられるのは自分がいじめられるのと同じくらい苦しいもんな。
だから引きこもったって感じか。
「それは辛いっすね、その友達は今どこにいるんですか?」
「亡くなったよ」
「え?」
「つい先週にな」
そう言って先生は徐にポケットからタバコを一本出して火をつけた。
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