第2話 その女、サブキャラの敵である
「おーいおいおいおい主人公?」
「んだよ、あとその呼び方やめろ、今すぐやめろ」
「うるさい主人公、それより外を見ろ!」
休日、都内にあるそれなりに賑わう街の喫茶店。
そこの窓から見える街の至る所にカップルや自称友達の男女二人組がいた。
「人が多いな」
「はぁ?何が"人が多いな"だよく見ろお前が見たのはせいぜい2、3組のカップルまたは準カップルだろ」
「お、おう」
なんだよ人が多いって言っただけでその圧のかけ方は、まるで新卒社員のやる気ない言葉を聞いて謎に怒る、良い感じに会社に染まってきた入社3年目くらいのうざい先輩社員みたいじゃん。
「いいかあそこにいるのはカップルだけじょない!よく見るんだあの行き場を無くして彷徨う同志達を」
「あー陰キャか」
「き、貴様ぁ、逞しく生きる我らサブキャラの同志達に向かってなんて事を言うんだぁ!」
そう言って片桐は机をバンッと悔しそうに叩いた。
なんでそんなキレ方すんだよ、もう俺はそんなお前が心底怖いよ。
それに陰キャなのは事実だろ。
「わかった、わかったから落ち着けって」
「いいか自分で陰キャって呼ぶのは大丈夫なんだ、でもな他人から陰キャって呼ばれるのだけは辛いもんなんだぞ」
「わかった、わかったから」
片桐はうるうるした目でそう訴えてきた。
んだよそれ、もうそれ考えてる時点で自分が陰キャなの認めてんじゃん。
なんでそれを他人に言われるの嫌がるんだよ。
もうよくわかんねぇよ。
「ううっ、こんなこと言いたいわけじゃないのに……」
「か、片桐?」
「とにかく!ああいう人達にももっとスポットライトが当てられるべきだと私は思うのです!」
「お、おう」
泣いていたと思ったら突然決意表明をしだすあたり、片桐はやっぱり情緒不安だな。
「ではいきましょうか鷲宮くん、我々の最大の敵の下へ」
「さ、最大の敵?」
「やらん」
「そこをなんとかこの通りです」
おしゃれな街の地下にある喫茶店で、片桐は今盛大に土下座をかましていた。
つか、最大の敵ってうちの学校の数学教諭の前田ちゃんかよ。
「あのなぁ片桐、休日にこうやって教師と生徒が会うだけでもレアなケースなんだぞ」
「は、はい」
「それを踏まえてこうして会ってやってるのはお前が、どうしてもわからない問題があって解き方を知りたいからというから私もこうやって来たわけだ」
「え、ええ」
「それがなんで貴様みたいな奇人の作るボランティア部の顧問になってくれとお願いされねばならんのだ!」
「お、お願いしますぅ雫ちゃん!」
そう言ってまた片桐は頭を地ベタに叩きつけた。
ていうか今片桐のやつ、雫ちゃんって言わなかったか。
「お、おいやめろよ奇人、鷲宮もいるんだぞ」
「知ってます!でも鷲宮くんならバレても問題ありません!」
「何故だどうしてだ、理由を言え簡潔に」
「友達が私以外いないからです!」
「がはっ」
俺は片桐の発言聞き、口に含んでいたアイスティーをまるで吐血したかのように吐き出した。
ていうか待て、ちょっと待てなんだその理由は。
たしかにそれは事実だ、でもそれが一番辛い。
「な、なんてこと言ってんだよ!」
「なるほど、それなら安心だ」
前田さんはそれを聞いて安心したようだった。
いや安心すんなよ。
いるから友達、600人もいるからネッ友だけど。
「良かった……では説明しますね、私片桐葵と前田雫先生は実は叔母さんと姪っ子の関係なんです!」
「へ?」
そう言って片桐は前田先生に抱きついた。
「寄るな奇人」
「ひ、ひどいっ」
抱きついた瞬間前田先生は片桐を退けるべく顔面に手を押し当てた。
「ふぐっ、や、やめてください雫ちゃん」
「うっさい離れろ奇人」
「は、離れません……」
「それよりお前らに朗報だ、顧問やってやるよ」
『え?』
「ただし条件付きだがな」
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