こんなのがヒロイン⁉︎"元"主人公くんはサブギャラちゃんに逆らえない。
神崎あら
第1話 "元"主人公くんの立ち回り
高校生における主人公とは、SNS上でそれなりの数のフォロワー数を持ち、クラス中に聞こえるほど大きな声で話しても誰も咎めることのない者などだと俺は思う。
昔……というか8ヶ月くらい前の俺はまさにそんな人間であった。
SNS上でフォロワー数は1000くらいいて、クラスでも人気があった。
まぁそれもこれも、俺の顔がそこそこカッコいいのとたまたまネットにあげた動画が少し伸びたことが原因だろうけど。
でもそれは過去の話、誰しも調子に乗れば何でもできると勘違いする、例に漏れず俺もそんなバカをしたため今ではクラスの除け者。
まぁ人生こんなもんかぁ。
『カツン』
「痛え」
そんな事を考えながら、学校の駐輪場近くを清掃しているとどこからともなく小石が飛んできた。
「おい、誰だよ小石投げた奴!出てこいよ」
「ほぉ、掃除をサボり散らかしていたわりには威勢の良いことですなぁ主人公ぉ!いや違ったな"元"主人公ぉ!」
「げっ片桐」
片桐葵、今では学校に居場所を無くした俺の唯一と言っていい友人である。
そしてかなりの変人でもある。
「ふっ、見てしまいましたよ貴方が物憂げに地面を見ているのを、どうせ過去の自分の栄光でも思い出していたのでしょうなぁ、あーダッサいダッサい」
「うっせぇ黙れ」
過去の栄光ってなんだよ、そりゃ昔は1000近くいたフォロワーも今や600人近くに減ったけどさ。
それでも600だぞ十分凄いだろ……って何考えてんだ俺は……。
「むむ、何故そこで貴方が落ち込むのですか?まったくこれだからメンタル激弱くんは困りますね」
「……うるせぇ」
「はぁ、大丈夫ですよ貴方にはこのサブキャラ教会会長の私、片桐葵がついているのですから!眼鏡クイッ!」
「それが心配なんだよなぁ……つか眼鏡クイッとか自分で言うなよ」
自称サブキャラ教会会長片桐葵、黒髪眼鏡でクラスでのあだ名は委員長ちゃん。
まさに理想的なサブキャラだと俺も思う。
ただ顔はそこそこ可愛い。
とにかく、この片桐はクラスでは大人しいが外ではやれ主人公どもを根絶やしにするだの、サブキャラの時代が来るだのとよくわからん事を普通に話す結構やばい奴である。
「いいですか!貴方は"元"ですが主人公格の人間です、故にそんな風に物憂げにしているとこうカメラがグイッとよってきてくれますが、サブキャラ格の人間のそういった葛藤にカメラは来ません」
「は、はぁ」
まずいなまた始まったぞ。
「ですが、サブキャラだってちゃんと悩みがあるんです!何故この世の創造主はそういった我々脇役に光を当ててくれないのでしょう」
「知るか!」
そう言って片桐は泣き出してしまった。
情緒不安定でよくわからん奴だが、俺は昔こいつに助けられた。
半年以上前、人から妬み恨まれていた俺は精神的に追い詰められもう死んでしまおうかとさえ思っていた、その時こいつが言ってくれた"表舞台にいなくたって人生は生きてるだけで楽しくて誇らしい!"という言葉に救われた。
故に現在俺はこいつの目指すもっとサブキャラに優しい世界のため、サブキャラ教会会員No.3として片桐と一緒にいる。
「ううひどい、酷すぎます女の子が泣いていたら"大丈夫?"と訊いて心配してくださいよぉ」
「うっせえ、さっさと頼まれてる清掃終わらせるぞ」
「……ううっ」
「そんで終わったらなんか甘いもんでも食べ行くぞ」
「おお!なんですかその切り返しは!まさに主人公ですね!私トキメキましたよ!」
「うっせぇ」
俺がそう言うと片桐の顔は一気に明るくなった。
ま、まぁ奢りはしないけどな。
「やったぁ、楽しみです鷲宮くんの奢りで食べるケーキはさぞ美味しいでしょうな!」
「だから奢らねぇって」
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