第7話『体育館の攻防①』
エ〇フって何だ!? エ〇フって!!? 異性に対して無限大!?
じゃ、じゃあ女子が失神したのも、長谷川さんや岩崎さん、三枝さんの態度も妙になれなれしくなったのも、このチート能力?の性なのか!!?
確かに異性にもてたいと想って来た! 長谷川さんは凛々しくて素敵だなとか、岩崎さんはぽっちゃりグラマラスで内気な所が凄く可愛いくていいと想ってた。三枝さんは何か大人の雰囲気で近くに居るだけでドキドキした。他の子たちだってそうだ。
「ど、どうしよう……」
俺はどきどき弾む胸を押さえ、自問した。
これって、誰とでも最後までいけちゃうって事!? キスしたり、胸を揉んだり、スカートの中であんな事やこんな事をしても良いって事!? ラノベやエロ漫画やなろうみたいに屋上や体育館や人気の無い教室でしちゃっても良いって事!? どうする俺!? 俺、どうしたら良いの~っ!!?
ドン!!
頭抱えて便座を前にう~んと唸っていると、不意に扉を叩かれ、心臓が口から飛び出るんじゃないかってくらいびっくりした。
「誰だ!!? 誰が入ってる!!? 全員、体育館に集合だぞ!!」
げげっ!? アベカンだ!!
「す、すいません! 2年C組の田中です! ちょっとお腹が痛かったので!!」
「むう。さっさと済ませろ!! 5分で体育館に来るんだぞ!! 判ったな!!?」
「は、はい!! すいませーん!!」
「たく、こんな時に……」
そうぶつぶつ呟きながら、アベカンの気配が廊下へ出て遠ざかっていく。
ほうと溜息をついた俺は、証拠の様に水を流し、それに続いた。
体育館への渡り廊下は、不思議と霧が薄らいで真っすぐに入口へと続いている。もう、かなり集まってるらしく、人の気配がここまで伝わって来た。
俺は左右に立ち込める濃密な白い霧の世界に、恐る恐る歩きながら、ちょっとだけ霧の中へ踏み込んだらどうなるんだろうと奇妙な好奇心が。
「あっ、来た来た! 田中く~ん!!」
長谷川さんの黄色い声に、俺はハッと体育館の入口で待っていた彼女に向き直った。
これが俺のチート能力なんだろうか? 今まで睨みつけられ、怒鳴られてきた記憶しか無かった長谷川さんの暖かな眼差しに、ドキリと胸が弾む。
それに応え、サッと手を挙げて微笑みを返していた。すると、彼女の背後に固まっていたクラスの女子たちも、わっと歓喜の声を。その中へと、俺は踏み入れていった。
「ごめんごめん。ちょっと気になる事があって、寄り道してた」
「もう~。田中くんが最後みたいよ」
そう言って、長谷川さんは俺の左腕に自然と腕を絡めて来る。自然、彼女の柔らかで暖かな右の胸も押し付けられ、俺の幸福度はぴょ~んと跳ね上がる。幸せだなあ~♪
「え~。やっば」
「もう。仕方ないんだから~」
そう言って三枝さんが、俺の右腕に。はおおおお~!!?
「あ、ずる~い!」
そう言って、俺の背中に素晴らしき柔らかな温もりを押し付けて来る岩崎さん。
俺は全校生徒の見ている前で、クラスの女子たちにもみくちゃにされた。何という羞恥プレイ!!? 生まれて来て良かった~!! と、この時は、そう想ったものでした。
「お前ら!! さっさとクラス毎に並べ!! 代表は、人数を数え報告しろ!!」
体育館の壇上でアベカンが吠える。
他の先生の姿が無い事に違和感を覚えつつ、俺たちは丁度ど真ん中の、2年C組の所へ。
そこではクラスメイト男子らの冷たい洗礼が待っていた。
「どういう事?」
「このクズ」
「裏切者~」
「死ねばいいのに」
「ちっ」
女子と正反対。冷たく乾いた目線で俺を射貫く、トモダチたち? シュンやダイダイからは憎悪とも取れる、強烈な何かを浴びせかけられる。これって、もしかして、殺意って奴!?
柔らかで甘い香りの女子たちに揉まれつつ、痛い視線にさらされる俺。そんな中、隣のクラスの女子たちからも、熱い視線が向けられる。こ、これ以上は無理ぃ~!!
「先生! 集計が集まりました!」
壇上で、3年A組、生徒会長の烏丸四郎が、一枚の紙を持ちアベカンに駆け寄った。流石生徒会長。お早い登校で。黒縁メガネが良くお似合いだ。すらっとした長身で、それでいてハンサム、学年で成績トップ。正に完璧超人を地で行くお方。これは心強い!
それを受け取ったアベカンは、不機嫌そうにそれを眺めた。
「百五十人丁度だと? 切りの良い数字だな?」
「はい。僕もちょっと奇妙だなって思いました」
アベカンは少し考えた様子でうなずいた。
「まあ、良い。戻れ」
「はい。でも、その前に質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
「何だ? 言ってみろ」
すると生徒会長はメガネをきら~んとさせ、口元に笑みを浮かべた。
それまでざわざわと騒いでいた生徒たちも、ぴたりと会話を止め、壇上に注目する。
そして、生徒会長はゆっくりと口を開いた。
「先生。外と連絡は取れているんですか? 私たちは、スマフォも携帯電話も校則で禁じられているので、外と連絡を取れるのは先生方だけだと思うのです。警察や消防とは? まさか、何もしていないなんて事はないですよね? それに他の先生方は?」
「そ、それを今から話す! いいか!! お前たち!!」
アベカンは声を張り上げ、ざわめく生徒たちへと呼びかけた。
「外部とは連絡が取れない状況だ!! 電話は不通!! スマフォも圏外だ!! だが、お前たちは飯山満学園の生徒だ!! 校則に則り、この様な非常事態においても、教師の指示に従い行動をする様に!! 全員、生徒手帳を掲げ持て!!」
そう言って、いつもの赤い生徒手帳を振りかざすアベカン。俺たちは、慌てて生徒手帳を掲げ持つと、ざざっと大気が震え、体育館に響き渡った。それは一種異様な光景。整然と赤い手帳を掲げ持つ百五十人。
「お前たちは日本の国民であり、飯山満学園の生徒だ!! 全ての行動規範は日本国憲法!! そして当校の校則である!! そしてお前たちは俺の生徒だーーーー!!」
高らかに両腕を大きく広げ、堂々と宣言した。
「お前たちは私の指示に従い、行動しなければならない!! 何故ならば、校則で決められているからだ!! 生徒は教師の指導に従わなければならない!! 全員、校則唱和ーーーー!! 第一条ーーーー!!」
「ちょっと待って下さい!!」
何故かアベカンの言葉には強制力があった。俺は盲目に赤い生徒手帳を開き。んん? 一瞬だが、生徒手帳の表紙に目が行った。
そこには『狭間学園生徒手帳』と金字で刻印されていた、ような気がしたのだ。
狭間?
そんな疑問が浮かんだものの、俺の身体は生徒手帳の校則のページを開き、思いっきり読み上げ様と、息を吸い込んだ時、生徒会長の一喝が、全ての行動を停止させた。
見上げれば、壇上にて生徒会長は光る何かを掲げ持ち、アベカンに挑む様に対峙していた。
その手にあるのは、まさかのスマートフォン!?
その小さな画面が、燦然と輝き、体育館にいる全員を照らし出しているかの様であった。
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