いあ!事故物件!
第23話
4月10日、ルルイエ探偵事務所兼ナコトが管理する呪いのビルにクリスが引っ越す数日前のこと。
ビル内の倉庫となっている一室での出来事である。
「ナコトさん、どうですか?」
「んーもうちょい右上げて」
「はい……どうです?」
「うん、ばっちり。いやぁ……こういうのも趣があっていいねぇ……なんていうのかな、思わずこぶしを振り上げたくなるよ!」
「そう……ですかね。間違ってもその拳は振り下ろさないでくださいね」
そんな会話の的になっていたのは一枚の絵画だった。
無駄に豪奢な額縁にはめ込まれたそれは、額縁と相反してグロテスクな何かが描かれている。
写実的ではあるが、いかんせんモデルのせいだろうか。
よくよく観察しなければ、人型の何かが人間を捕食している絵とは気付けないだろう。
「んー、にしてもまさかピックマンの絵が手に入るとはねぇ! いやぁ……もう感無量だね!」
「そうですね……まぁひと財産になりそうですけど、あまり気持ちのいい物じゃないですね」
ナコトの言葉にクリスが返答する。
その表情からは生気が抜け落ちたような、あるいは目が濁ったドブのような色彩を放っているような、何とも言えない様子だった。
対してナコトの表情はと言えば喜びに満ち溢れ、全身を使い嬉しさを表している。
具体的に言うと多方面に物理的被害が及ぶことになるため明言こそできないが、歳を考えずにぴょんぴょんと跳ね回りながら謎の踊りで歓喜を表現している。
が、それ以上にひどい事になっているのが一名。
「借金……課金が……マーリン……爆死……えぐっ……」
魂が抜け落ち灰のように真っ白になってうわ言をつぶやき続ける女。
ルルイエである。
「ルルイエさん……可哀そうに……」
「クリスちゃん、なんか他人事みたいだけど2割くらいは君の責任だからね」
「3割はナコトさんです」
「うぅ……借金増額ぅ……」
酒瓶を抱きかかえ、倉庫となっている一室で涙を流すルルイエ。
どうしてこのような事態になったかといえば、話は7日程前になる。
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