第8話

「ちなみにさっきから気になっていたんですけど、お父さんのお知り合いですか?」


「まぁね、話すと長くなるからそれはまたの機会に……っと、そうそうお仕事の話だけども探偵って結構地味なお仕事だけど大丈夫? 猫探しとかそんなんばっかりだよ?」


「いいんですよ、ぶっちゃけた話、探偵の助手やってましたってだけでかっこいいじゃないですか! ワトソンはホームズの助手ですが医者でしたし、ヒーロー兼探偵助手とかもう豪華特盛じゃないですか!」


「うん、わからない。で、ヒーローになりたいなら組合の門を叩いたら?」


 組合とは正式名称ヒーロー組合、世間的にヒーローと呼ばれる職業の者達が集う場であり歩合制ながらに給金も出るため多少腕に自信がある、あるいはそもそも種族的に強い者であれば組合登録をしている。


 ただし前述の通り登録者はヒーローをやっている間は素顔や名前を隠さなければいけないという制約がある。

 そのため隣の席で転寝している友人が夜な夜な悪の組織と戦うヒーローであるというのも実はそれほど珍しい事ではなかったりする。

 のだがクリスの場合はと言うと……。


「あー……ちょっと門前払いされまして……だから実績を先に作ろうかなと……」


 年齢や経歴、種族や家族構成を理由に組合に登録を断られる場合がある。

 そういう場合は実績を作ってから組合に実績を提出することで登録が認められるケースもあるのだ。

 数少ない人間のヒーローは大半がその手の、つまり実績を携えての登録であり弱小種族と言われながらも前歴のためそれなりの稼ぎを得ることができている。


「にゃるほどねぇ……うん、わかった! あとは事務所の所長がOK出せば合格だけど、そちらも親御さんに色々言わないといけないだろうからね。私からも連絡はしておくけどよろしく。あ、これ名刺ね」


 懐から二枚の名刺を取り出したナコトはあでゅーと言いながら取調室を出て行った。

 一枚はナコト本人の物であり住所や電話番号が記載されている。

 もう一枚はといえば。


「ナコトさん、いつ私の名刺スリ取ったんです?」


「書類のぞき込んでるときにちょちょいとね」


 ルルイエの名刺だった。

 そこには『ルルイエ探偵事務所』という社名と所長なる肩書、その下にルルイエ・グリモワールと名前が記されており、ナコトの名刺と同じ住所が記載されていた。

 電話番号は携帯電話の物なのか違っており、横にはメールアドレスが書かれていた。

 それを見てクリスは焦げた服ももはやどうでもいいと言わんばかりに上機嫌になり、そして銃の形をしていた水を人間の形に組み替えて遊んでいた


「せっせっせーのよいよいよい」


 それを見てナコトは苦笑し、アバーラインとアデルはその胆力にため息をつき、ルルイエはこんなのを雇わなきゃ家賃値上げされるのかと頭痛を訴えていたのであった……。

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