第4話 先輩の気持ちは?

「水奈先輩こそなんで?」

「わ 私は春香が朝食を食べに来ないかって言うから。

 家も近いし何より春香は料理上手だからな。

 ってそれはいい!坂下こそなんで春香の家に居るんだ?

 それにその服は昨日のままじゃないか?

 もしかして泊まったのか?

 ま まさか!坂下は春香と・・・」

「いや いやちょっと待って下さい。なんでそうなるんですか!」


いつも会社では冷静な先輩が凄く慌ててた様子で僕の方を見て話しかけてくる。


「変に隠さなくてもいいんだぞ。

 春香は私にとって大切な後輩であり友人だ。

 ふ ふたりがそういう関係だって言うんなら私は・・・身を引くから」


先輩はそんな事を言いながら悲しげな表情をしている。

え~と。。。


「だから違いますって。

 ん?身を引く??」

「な 何でもない!!」


身を引くって?何?

それに今度は顔を赤くしてる。

ん?


「あ~もう。はいはい。2人とも落ち着いて」


僕らのやり取りを見ていた春香さんが会話に入ってきた。

でも何でそんなにニヤニヤしているんですか?


「もう。水奈先輩!私には愛しの婚約者様が居るのを知ってるでしょ?

 坂下くんは成海のお客さんですよ。

 そもそも成海も坂下君も先輩の部下なんだから2人が仲いいの知ってるでしょ?」

「へ?成海君の?そ そうだな。確かに2人は仲がいいな」


いやいや、落ち着いてくださいよ。

何で先輩そこで驚いた顔してるんですか?

僕が春香さんと付き合ってるって話しよりは全然自然な話でしょ。

そもそも何でそっちを先に思いつかないんですか。


「そうですよ。成海とは昨日一緒に飲みに行って・・・それで・・・途中から記憶ないんですが、飲みすぎてしまったらしく泊めてもらったんです」

「そ そうなのか!?」

「そうなんです」


あ、今度は少し嬉しそうな顔してる。

本当今日の先輩はよく表情が変わるな。

会社ではあんまり表情変えないし僕に話しかけてくるときは、いつも少し怒ったような感じが多いもんな。普段からこんな感じならいいのに。

あ、そういえば今日の先輩って私服だよな。

休日だし当然だけど私服姿を見るのは初めてだ。

職場でのスーツ姿もビシッとして凛々しいと言うかカッコいい感じでいいけど、今のワンピースも清楚な感じで先輩に似合ってる。

それにポニーテールとか!!凄くいい!!


「な 何?さっきからジロジロ見て!」

「へ?あ、す すみません。私服姿を見るの初めてだったので新鮮で」

「!!」


警戒させちゃったか?

というより女性をジロジロ見たりとか気持ち悪いよな僕。


「へ 変か?ワンピースとか。それにどうせ私にはこういう感じの服は似合わ無いとか思ってるんだろ?」


え?何言ってるんだ先輩。

普通に似合ってますけど。


「いやそんな事ないです。清楚で可愛い感じが凄く似合ってますよ」

「ウ ウソつけ。私にお世辞言っても何もいいこと無いぞ!!」

「い いえ。お世辞とかなしで普通に可愛いですって」

「!!」


ん?僕、何か変なこと言ったか?

急に先輩下を向いたまま無言になっちゃったんだけど。

春香さんは何だか僕らを見てニヤニヤしているし。


「あれ~?先輩も来てたんですね。それよりどうかしたんすか?」


お手洗いに言っていた渋沢が戻ってきたんだけど、春香さんと同じく僕と先輩を交互に見ながら何やらニヤニヤしている。

そして水奈先輩に聞かせるかのような大きな声で話しだした。


「坂下。そういえば昨日は牧村先輩のことメチャクチャ褒めてたよな♪

 可愛いとか綺麗だとか憧れるとか」

「!!」

「な 渋沢!!何を言ってるんだよ」


え?僕昨日そんな事まで渋沢に言ったのか?

確かに本心ではあるけど本人を前に言うことじゃないだろそれ。

メチャ恥ずかしいし、何だかさっきから先輩も下むいて少し震えてる。

絶対怒ってるよ。


と今度は春香さんが


「そうなんだぁ~。じゃあ坂下君と付き合っちゃえばいいんじゃないですか?

 水奈先輩もこの間彼氏が欲しいとか言ってましたよね?

 それに気になる新人君が居るとかも言ってましたよねぇ。

 もしかして坂下君だったりして♪」

「は 春香!!」


え?気になる新人君?

営業部に配属された新人は僕と渋沢だけだし・・・

それに彼氏が欲しいって言ってたってことは冴島さんとは・・・


「せ 先輩は冴島さんとお付き合いしてるんじゃ?」

「へ?冴島君?な 何で私が冴島くんと?」

「昨日会社のエントランスで凄く楽しそうに・・・」

「違う!冴島君とはただの同期で・・・昨日もちょっと立ち話してただけだよ。

 それに冴島君って付き合ってる人も居るよ」


え?じゃあ冴島さんのことは僕の勘違い?

それに冴島さんには彼女さんが居る?


「じゃ じゃあ冴島さんとは付き合ってないんですね!!」

「だ~か~ら~。付き合ってないって言ってるじゃない。

 それに私が好きなのは・・・」

「え?」

「な 何でも無いわよ。って坂下君は何でそんなに嬉しそうな顔してるのよ!」


そんなに嬉しそうな顔してるのかな?

でも、そうか~付き合ってないのかぁ~。

そうか~♪


「そ それより春香!どういうことよ。

 成海くんと二人して何か企んでるでしょ!」

「確かに成海に頼まれはしたけど、奥手な水奈先輩の為に一肌脱いでみただけですよ♪」

「一肌って・・・」

「俺だって奥手な友の為っていうか、毎回絡み酒されたらたまらないからな♪」

「渋沢ぁ・・・」


と春香さんと渋沢はお互いにアイコンタクトしつつ僕らにとんでもないことを行言ってきた。


「ということで後はお若いお二人にお任せしますか♪

 私、片付けなきゃならない仕事があって」

「は 春香!?」

「ってことだ。今日は親父たちは仕事で居ないし俺もこの後出かけるから何かあったら姉ちゃんにな」

「渋沢?」

「うん。私は部屋で仕事してるから何かあったら声かけて下さいね♪

 それじゃ♪」


そう言うと渋沢と春香さんはリビングダイニングを出ていってしまった。

取り残された僕と水奈先輩。

思わず顔を見合ってしまったけど何だか気まずい。


・・・何この状況。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る