閑話 決まりだろ。
<渋沢 成海視点>
週末金曜日。
今日は同期の坂下と飲み会だ。
坂下とは入社式で知り合って以来の仲だけど何となく気が合い部署も同じ営業部。
一緒に行動する時間も長いし愚痴なども言い合える仲となっている。
今日も普通に飲みに行く約束をしていたわけだけど、ちょっとした出来事があり予想外に酷く落ち込んでしまった坂下を励ます会となってしまった。
明日は俺も麗美とデートだから早めに切り上げるつもりだったんだけどなぁ。。。
ちなみにその坂下が落ち込んでいる理由。
牧村先輩が女性社員に人気の冴島さんと楽しそうに話をしているのを見てしまったからだ。
普段から真面目で滅多なことでは表情を変えない先輩が笑顔で話しをしてたんだもんな。俺も驚いたさ。
ただ"牧村先輩に惚れてんだろ"とか坂下のことを何度かからかったりはしてたけど、正直いつも厳しく指導されていたし本当に先輩に惚れてるとは思っていなかった。
確かに悪い人では無いと思うけど俺には無理だ。
それにしても、ついさっきまではプレゼン資料を課長に褒められてテンション上がっていたのにこの落ち込みよう。
わかりやすい奴だ。
「ちくしょう。。。やっぱり先輩も冴島さんみたいなイケメンがいいのかよ!!」
「おいおい1杯目から荒れるなよ。
ってかさ、そもそもまだ酔うほど飲んでないだろお前」
「い・い・ん・だ!!今日は飲むぞ!!」
おいおい。まだ飲み始めたばかりだろ。
酔うには早いぞ。大丈夫か?
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「でな。水奈先輩の言うとおりに書類作ったら凄く課長に褒められたんだ。
本当に凄い人なんだよ。仕事ができて美人で優しくて・・・憧れるよな!」
「はいはい。そうだな。先輩は凄いな」
そして飲み始めからあっという間に2時間が過ぎた。
聞いてもいないのに自分の恋愛経験や自分がどれだけ牧村先輩のことが好きなのかを散々語ってくれた。
っていうか過去の恋愛。告白してないなら振られたとは言わんだろ。
坂下っていいやつだけどそういうところハッキリしないからな。
いくら好意を持ってても言葉に出さなきゃ気持ちは伝わらないって。
俺は麗美にちゃんと告白したぜ。
それにしても坂下が途中から先輩のこと名前呼びで話し出したときは驚いた。
いつからそんな関係だったんだ?
坂下が言うには先輩が名前で呼ぶように言ってきたって言うけど・・・それって絶対先輩も坂下のこと特別扱いしてるだろ。俺言われたこと無いぞ。
そう考えると先輩が冴島さんと付き合ってるとかは無いんじゃないか?
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結局、飲み会は坂下が喋り疲れて寝入ってしまったところでお開きとなった。
まぁ坂下も普段はそんなに飲まないし今後は大丈夫だと思いけど・・・今日は飲み過ぎだ。俺も止めるタイミング逃しちまったし。
で、このまま家に帰すのも心配だったから家に泊めるか悩みながら店を出たところで仕事帰りの姉貴に会った。
2歳年上の姉貴は大学卒業後に親父たちと同じ出版社に就職したんだけど最近忙しくて毎日遅いんだよね。姉貴の彼氏さんも寂しがってたし。
まぁそれはそれとして、姉貴に事情を話したら車で迎えに来てくれることになった。家は近いけど坂下に肩貸して歩くのは結構大変だったから凄く助かった。
「ありがとな」
「うん。でもあんまり飲みすぎないようにね」
「あぁ注意しておくよ」
でも坂下と牧村先輩のこと・・・どうしたもんか。
あ、そうだ姉貴なら何か知ってるかな。
「そういえばさ、牧村先輩って彼氏さんとか居るって聞いたことある?」
「牧村先輩?水奈先輩のことだよね?」
「そう。今日会社のイケメン上司と楽しそうに話してるの見てもしかしてって」
「う~ん。彼氏が居るって話は聞いたこと無いなぁ。
先輩って真面目だし高校まで女子高通いだったから、ちょっと男性が苦手で・・・それに結構人見知りなのよね」
人見知り?男性が苦手?そうは見えないけど。
「そうなんだ。あんまり人見知りな感じはしないけど」
「ふふ。水奈先輩って会社では結構無理しているみたいだから。
よく愚痴聞かされるよ」
無理して虚勢張ってるのか。
じゃぁいつも厳しい顔してるのはそのせい?
それに人見知りで男性が苦手となるとやっぱり冴島さんとは付き合ってないのか?
でも冴島さんとはリラックスした感じで話しをしてたよな。
と、俺が色々と考えていると姉貴が思わぬ一言を!!
「あ、そういえばこの間会社に気になる年下の子が居るとは言ってたかも」
・・・ん?気になる年下の子?それってもしかして!?
「え?何?その気になる年下の子って。もうちょい詳しく!!」
「私も詳しくは聞いてないけどさ、この間一緒に買い物行ったときに教育担当している新人の中に気になる子が居るって。あ、もちろん成海のことじゃないよ♪」
「ば、バカ姉。そんなわけ無いだろ」
っていうか牧村先輩が教育担当しているのって俺と坂下の二人だけなんだから坂下で決まりだろ!
それなら・・・
「なぁ姉貴。ちょっと俺に協力してくれないかな?」
「え?」
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