第3話 先輩は付き合ってる?

「ちくしょう。。。やっぱり先輩も冴島さんみたいなイケメンがいいのかよ!!」

「おいおい1杯目から荒れるなよ。

 ってかさ、そもそもまだ酔うほど飲んでないだろお前」

「い・い・ん・だ!!今日は飲むぞ!!」


あの後、僕は渋沢と一緒に駅前の居酒屋に来ていた。

元々来る予定ではあったけど・・・何だか今日は凄く飲みたい気分だった。


「・・・にしてもお前先輩のこと本気だったんだな」

「本気で悪いか!」


そうなんだよな。

正直なところ先輩が男性と楽しそうに話しをしているのを見てこんなに動揺するとは自分でも思わなかった。

牧村先輩に対しては、着任後に色々と指導してもらったこともあったし尊敬はしていたけど恋愛感情とかそういう感情を持っている自覚はなかった。

でも・・・先輩が僕以外の男性と楽しそうに話しているのを見て何だか辛かった。

別に先輩と付き合っているわけでもないし、先輩が誰と一緒にいようが僕がどうこういう権利は無いんだけど・・・


ただ、僕が好きになる人ってだいたい彼氏がいたり僕なんか眼中になかったりってことが多いんだよな。

中学の時に憧れていた子も高校の時に通学バスで一目惚れした子も大学で同じサークルにいた子も・・・みんな彼氏持ちで告白すら出来なかった。

唯一告白した大学時代の同級生にも"いい人なんだけど"って振られた。


確かに僕はこれといった特徴もない男だ。

でも、そこまでブサイクでは無いと思うし、男女ともに友達も多かったから嫌われるようなタイプではないとは思ってる(多分)

ただ女性からは、"坂下君って優しいよね"とか"いい人だよね"とは言われるけどそれ以上にはなれないんだよな。


「まぁ落ち着けよ。

 先輩が冴島さんと付き合ってるってまだ決まったわけじゃないだろ?

 そもそも冴島さんも牧村先輩も人気があるから付き合ってるとかなら社内で噂になってるはずだぜ。だから多分付き合ってないって。

 それに言いにくいけど・・・女は牧村先輩だけじゃないしさ」

「確かにそうかもだけど・・・」


確かに冴島さんは女性社員に人気だから牧村先輩と付き合ってるんなら噂にはなってそうだけど・・・隠れて付き合ってるとしたら・・・


「あ、ビール追加いるだろ?裕也さん!生2つ追加で!」

「おぅ!生2つな!」


いつの間に飲んだのか渋沢も1杯ジョッキをあけていて、僕の分と合わせてお店の人に注文してくれた。

お店の人・・・清水裕也さん。

確か渋沢が通っていた川野辺高校バスケ部のOBで今でも部活の臨時コーチをしてるって言ってたよな。

うちの親と同じ位か少し上位の年齢なんだろうけど、スポーツをしているからか体も引き締まってるし見た目も若々しくてカッコいいんだよな。

それに・・・奥さんも同じくバスケ部のOGとのことで若々しく美人だし。

 確か先輩もバスケやってたはずだから、僕がもっとカッコよければ振り向いてくれたんだろうか・・・


「そういえば、ほら薬剤部に配属された同期の宮村。凄く可愛かったじゃん。

 おとなしそうな感じだったし声かけてみたらいいんじゃないか?」

「確かに可愛いかったけどさ。でも僕は・・・」

「・・・あぁ~ほら泣きそうな顔すんなよ。とりあえず飲んどけ!」


そう言いながら追加されたジョッキを僕に渡す渋沢。

何だか気を使わせて悪いなほんと。


「渋沢ありがとな。今日は朝まで付き合えよ~!」

「はいはい」


こういうとき嫌そうな顔しつつも付き合ってくれるんだよな渋沢って。

本当いいやつだよ。


でもさ先輩も先輩だよ。

"名前で呼んで"とかただの後輩に言うか?

先輩も僕のことが気になってたんじゃないのか?

あ~もう女ってわからない。。。。







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「うぅ。。。頭痛い。ってどこだここ?」


目を開けると見慣れない天井が見えた。

僕の住んでいるアパートでは無い。


確か昨日は会社のエントランスで水奈先輩が冴島さんと一緒に居るのを見て何だかモヤモヤした気分になって・・・渋沢と飲みに行って、飲みまくって・・・それからどうしたんだっけ???

う~ん思い出せない。

こんなに飲んだのは本当久しぶりだな。

二日酔いで痛む頭を抑えながら寝ていた布団を出て部屋の外に出ると


「あ、起きたか坂下」

「・・・渋沢?」

「渋沢じゃねぇよ。何寝ぼけてるんだ。大変だったんだぜ昨日は。

 お前完全に酔い潰れてちゃったから、姉貴に車で迎えに来てもらって家まで運んでさ」


う~やっぱりそうなのか。

後半記憶が殆どないけど、渋沢だけじゃなく渋沢のお姉さんにまで迷惑かけたんだな。

ということはここは渋沢の家か?


「ほんと申し訳ない!!昨日は本当飲みすぎたよ」

「まぁなたまにはそういう事もあるだろうけど・・・無茶はするなよ」

「悪い。で、ここは渋沢の家か?」

「あぁ。お前ん家がわからなかったからな。俺は地元だし。

 それより朝食食べるだろ?準備できたから起こしに行くところだったんだ」

「ありがとな。何から何まで」


本当、渋沢には感謝しかないな。

多分昨日は飲んで色々と愚痴まで聞いてもらったんだろうし・・・って後半あんまり覚えてないけど・・・僕変なこととか言ってないよな?


そんなことを思いながら僕は渋沢の後について階段を降りた。

階段を降りた先はリビングダイニングになっていて、ダイニングテーブルに見知った二人の女性が座っていた。

一人は渋沢のお姉さんの春香さん。そしてもうひとりは・・・


「水奈先輩?」

「坂下?なんで春香の家に???」

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