第五章 スペインの太陽

 ルイス警部が、眠りに落ちてからどの位の時間が経ったのだろうか、眠気に浸りながらルイス警部の耳には、部屋の中に置かれているベッドの左横の小さなテーブルの上の黄色の固定電話が“リーン、リーン、リーン”と鳴り響くのが薄っすらと聞こえて来た。ルイス警部は数回寝返りをして、黄色い固定電話の受話器を持ち上げて、電話の相手に「はい、ルイスです」と電話でいった。電話の相手は、礼儀正しい口調で、ルイス警部に「ああ、ジョナサン様ですね、ロビーの受付の者です。今、下にオルコット捜査官と名乗る人物が来ていまして、お客様にお会いしたいとの事です。彼女が言うには、もう仕事の時間だとの事です」と電話でいった。ルイス警部は、驚きのあまり起き上がり、ロビーの受付の者に「ああ、そうか、連絡ありがとう。直ぐに着替えてから階下へ向かうと、オルコット捜査官に伝えて置いてくれ、頼むよ」と電話でいった。ロビーの受付の者は、穏やかな口調で、ルイス警部に「はい、承知しました。それではお伝えしておきます、それでは失礼致します」と電話でいった。すると直ぐに、ルイス警部とロビーの受付の者の電話でのやり取りは終わった。ルイス警部は、眠気に負けずに、起き上がりベッドに座り「良しそれでは、仕事に行くとするかな。急がなくては」とつぶやいた。ルイス警部は、新しいワイシャツと新しい靴下にして、他はスペインのセビリアに到着した時に着ていたスーツを着用して、書き物机から携帯用のピストル(拳銃)と英国特別捜査機関の身分証を取り出して、携帯用のピストルを装備して、身分証をジャケットの内側のポケットにしまい、部屋を後にした。

 ルイス警部は、小走りしながら床の黄色のカーペットを革靴でコツコツと音を立てながら、エレベーターの方へと向かって行った。するとルイス警部がエレベータの前に到着すると、丁度エレベーターが自分の居る階で停まり、人が数人降りて来た。ルイス警部は心の中で「良し、良い調子だぞ」と思った。そしてルイス警部はエレベータの中に乗り込むとオルコット捜査官の居る一階へと目指した。途中で乗って来る泊まり客が一人もいなくて、数分間が経ち、一階に到着すると、ルイス警部は直ぐにエレベーターから降り立ち、辺りを見回した。ルイス警部が丁度ロビーの待合室のソファーに眼をやると、オルコット捜査官がソファーに座り、待っているのが見えて来た。ルイス警部が、オルコット捜査官に近づいて行くと、オルコット捜査官がルイス警部に気が付き、手を振って来た。ルイス警部もオルコット捜査官の行動に気付いて、手を上に上げた。オルコット捜査官は、意気込んだ様子で、ルイス警部に「ああ、おはようございます、ジョナサン警部。来ましたね、ロビーの受付に聴いたらまだ眠っていたとの事でしたけれど、起こしても大丈夫でしたか?」といった。ルイス警部は、少しためらいがちに、オルコット捜査官に「ああ、問題ないよ、しかし少しだけ頼みがあるんだ。朝食をまだ済ませていないんだ、このホテルで食事を取りたいんだがいいかな?」といった。オルコット捜査官は、にこやかに微笑み、ルイス警部に「ええ、分かっていましたよ、ジョナサン警部。朝食の事も含めた予定で、今のこの時間帯に迎えに来たんです。だから今から食事をするのは問題無いですよ」といって、頷いて見せた。ルイス警部は、落ち着いた嬉しそうな様子で、オルコット捜査官に「それは良かった、お腹が空いていてね、このままだと仕事に支障が出ると思っていた所だったんだ」といって、安心した様子を見せた。オルコット捜査官は、ソファーから立ち上がると、ルイス警部に「それではこのホテルのビュッフェ式朝食を頂きに行きましょう、ジョナサン警部」といった。ルイス警部は、浮足立ちながら、オルコット捜査官に「そうだな、では早速これから、そのビュッフェ式の朝食を取りに向かいましょう」といった。ルイス警部とオルコット捜査官は、ホテルのレストランへと向かって行った。二人がビュッフェ式朝食を行っている場所へと、到着すると、そこには色々な色とりどりの食事がたくさん並んでいた。ビュッフェ式朝食の開催場所のテーブルというテーブルはとても長くて赤いテーブルクロスが敷かれていた。そのテーブルには大きな入れ物に入った、食べ物が並んでいる。大きな入れ物からは魚介類のたくさん入っているパエリアのパエージャ・ミスタ、たくさんの野菜が入っているパエリアのパエージャ・デ・ベルドュラ、大きなオムレツのトルティージャ、スペインのガリシア栗豚のロースト、チョリソー、ハモンセラーノ、そしてスペイン産のワインのボトルやオレンジジュースのボトルが並んでいる。パエージャ・ミスタは、鶏肉と魚介類がたくさん入っていて、トマトやニンニクなどの野菜を入れ、魚介類からの出汁で味を強くしたパエリア。パエージャ・デ・ベルドュラは、ソラマメや玉ねぎやアーティチョークやパプリカといった野菜がたくさん入ったパエリア。トルティージャは、玉ねぎやほうれん草やじゃがいもやベーコンやハムや海老を炒めて、塩を加えた卵に入れて混ぜ合わせて、オリーブ油を使い、フライパンを使い焼き上げた物である。スペインのガリシア栗豚のローストは、スペイン北西部のガリシア地方において、栗を食べさせて育てた豚をローストした物である。チョリソーは、細かくした豚肉に塩を加えて、ニンニクやパプリカを加えて腸に詰めて、干した物である。ハモンセラーノは、世界三大生ハムの一つで、塩漬けし、豚肉をとても長い間低い温度下の元で、吊るして乾燥させて、熟成した生ハムの事です。時刻は、六月十九日の水曜日の午前六時半だ。ルイス警部とオルコット捜査官の二人はビュッフェ式朝食をゆっくりと堪能して、午前七時半にホテルを出て、オルコット捜査官が運転して来た、色が赤色のSEATの「レオン新型」の警察車両に、二人は乗り込み、セビリア大聖堂へと出発した。

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