第六章 セビリア大聖堂への再訪問
少しばかりして、目的地のセビリア大聖堂へと到着して、ルイス警部は車からさっそうと降り立ち、オルコット捜査官は勢い良く、運転席のドアを開けて、降り立った。それからルイス警部とオルコット捜査官は、セビリア大聖堂の正面玄関から金の盗難現場へと向かった。盗難現場は、昨日と相変わらず、物凄い光景が広がっていた、何度見てもとても痛ましい光景でならなかった。ルイス警部は、英国特別捜査機関の科学捜査班がとても熱心に事件現場の調査をしているのを暫く眺めると、オルコット捜査官に「ここにいる科学捜査班の中に、誰か知り合いや仲の良い人はいないかい?オルコットさん、今のこの状況で、質問をしたいんだ。少し話しを、聴いて貰いたいと、思ってね」といった。オルコット捜査官は、愉快そうに、ルイス警部に「ええ、科学捜査班には、何人か頼れる人たちがいるんです。今日ここに、来ている科学捜査班のメンバーでは、班長のアダム・ヒューズと、私はとても仲が良いんです。では早速彼に、今の捜査の状況を聴いて見ましょう」といった。ルイス警部は、嬉し気な表情を見せて、オルコット捜査官に「それは嬉しい知らせだね、オルコットさん、ではそのアダム・ヒューズという方に会わせてくれ」といった。オルコット捜査官は、きびきびとした物腰で、ルイス警部に「ええ、こっちですよ、ジョナサン警部。私に付いて来て下さい。彼を紹介しますから」といって、二人は今居る所から少し離れた、向こう側へと歩き出した。オルコット捜査官は、励ます様な笑顔で、科学捜査班の一人に「おはよう、アダム。調査は順調にいっているかしら?こちらうちの捜査機関の特別捜査官のジョナサン警部よ、彼があなたと話したいって言っててね、今良いかしら?」といって、相手の肩に手を置いた。アダム・ヒューズは、上機嫌な様子で、オルコット捜査官に「ああ、構わないよ、犯人を捕まえる手助けが、出来るなら喜んで、引き受けるさ。それで話しとは何かな?」といった。するとルイス警部は、進み出て、アダム・ヒューズに「僕がルイス・ジョナサンで、ジョナサン警部だ。ジョナサン警部と呼んでくれ、それで話しと言うのはだね、この事件は侵入の仕方が、通常とはとても異なるので、調査は大変でしょう。それで通常とは異なる部分を、教えてくれないかと思った次第なんだ」といった。アダム・ヒューズは、関心した様子で、ルイス警部に「ええ、はい、実はジョナサン警部のお察しの通りで、この犯人は通常の侵入の手口とは違います。でもそこがこの事件の大きな手掛かりで犯人の個性が出て来ているのです、そこから犯人を特定出来るのではないかと考えている所です」といった。ルイス警部は、感嘆の唸りを出し、アダム・ヒューズに「それでその個性とはどういう所がなんだね?」といった。アダム・ヒューズは、快活な口調で、ルイス警部に「ええ、まずはですね、天井を円形に壊して大聖堂内へと侵入して来ている所ですね。そしてですね、円形に壊すのに、使われた物とかです。普通は恐らく爆薬を用いての、犯行だと思います。それからあの辺りに落ちていたワイヤーロープなどを見ると、ワイヤーロープを使うのに必要な一式の道具ですね。そうそう少し話しを、戻しますが、円形に壊す技術といった所でしょうか」といって、眼をきらりと輝かせた。ルイス警部は、喜んだ様子で、アダム・ヒューズに「そうか、なるほど、実は僕とオルコットさんで、気が付いたというか、発見した事があってね、これなんだが。僕たちは製造番号ではないかと推測したんだ。ヒューズさんから見て、どう思うかい?」といって、オルコット捜査官の携帯電話に、保存されている写真を見せた。アダム・ヒューズは、眼を凝らして、良く覗き込みながら、ルイス警部とオルコット捜査官に「これは…うむ、いやこれは…、あなたたち二人の言う様に、この留め金の製造番号ですな。これはワイヤーロープの留め金で、英語のアルファベットが三文字ZTKと数字の四桁の三、四、零、一と書かれています。これは紛れもないワイヤーロープの留め金の製造番号で、その製造番号がZTK三四零一という事です。念の為にきちんと、調べはしますが、製造番号でほぼ間違いないですな」といって、唸った。ルイス警部は、一歩犯人へと近づいたと思い、ほくそ笑みながら、アダム・ヒューズに「それは嬉しい事だね、手掛かりだな、調査報告が出来上がるのを、楽しみにしているよ。その頃には色々な事が分かっていて、捜査が順調に進む事だろう。ああ、それと念の為に監視カメラに犯行現場で犯人が映っていないか、そして犯人に繋がる事が映っていないかを調べてくれるかい?そして分かった事柄を僕たちに知らせて欲しい」といった。アダム・ヒューズは、大きく頷き、ルイス警部とオルコット捜査官に「はい、了解です、私に任せて下さい。調査が済み次第、直ぐにお知らせしますよ、大手柄をあなたたちに取らせてあげますよ。ああ、それと頼まれていた六月四日の火曜日に届いた盗難の予告状は午後二時五分に受け取ったみたいです。しかし、これがまた届いた、というより気付いた、言うべき見たいです。その予告状はセビリア大聖堂の責任者宛てに送られた物で、それを発見したのが午後二時五分だったみたいです」といって、口元に微笑を浮かべた。ルイス警部はお礼を言い、オルコット捜査官は、感激しながら、アダム・ヒューズに「今回もありがとう、アダム。頼りにしているわ」といって、握手をした。ルイス警部は、その場で思案顔で立ち尽くしていた。するとオルコット捜査官が、駆け寄って来て「ジョナサン警部、いくつかアダムからヒントを貰えましたね。それでいったい何から調べてみますか?どれもとても興味深い事ですけれど」といって、眼をキラリと光らせながら視線を投げた。ルイス警部は、もう既に決めていたらしく、直ぐに、オルコット捜査官に「うん、僕はあの大聖堂の天井を、円形に壊した技術の事を、詳しく調べて、犯人への手掛かりにしようと思うんだ。もしかすると一気に、犯人の特定が出来るかも知れないからね」といった。オルコット捜査官は、とても明るい笑顔を見せながら、ルイス警部に「ジョナサン警部、とても良い心意気です、感心します。はい、ではその天井を、円形に切り取る事の、出来る技術を持った人を探しましょう」といって、拳をを握り締めた。ルイス警部とオルコット捜査官は、急いでセビリア大聖堂を出ると、警察車両に乗り込み、スペインの英国特別捜査機関の作戦本部へと向かった。
警察車両で、セビリア市内を走って、少しばかりか時間が経った時、作戦本部の横に広がった大きなビルが見えて来た。オルコット捜査官は、先程までの車の速度から静かに速度を緩めて、地下の駐車場へと下りて行った。その後、ルイス警部とオルコット捜査官は、エレベーターへと駆け込み、上の階へと目指し、作戦室へと到着した。そして二人は、英国特別捜査官の情報分析官に頼み、今回のセビリア大聖堂の事件の様な、円形に壊す技術を、持っている人物の特定を急いだ。ルイス警部は、暫くコーヒーを飲みながら、情報分析官の一人が色々な情報を調査しているのを待った。オルコット捜査官は、腕を組んで、立ち尽くしていた。すると、情報分析官のエイミーが、慌てた様子で、ルイス警部とオルコット捜査官に「あのう、頼まれていた円形状の、くり抜き技術に関する事を、調べ終わりました。それで、少しばかり犯人が利用しそうな、職種を特定しました。これなんです、見て下さい」といって、パソコンの画面を指さした。ルイス警部は、興味津々という様子で、情報分析官のエイミーに「うん、どれどれ…、おお、建築業の建物を形造るのに使われている技術か。なるほど、それからどんな事が分かったのかい?ああ、言い忘れていたが、今回のセビリア大聖堂の事件には、爆弾を使用したと思われるんだ。その事も踏まえてくれ、言うのが遅れてしまって申し訳ない」といった。情報分析官のエイミーは、毅然とした態度で、ルイス警部に「いいえ、それではその事も含めた状態で、再調査してみますね。ああ、直ぐに出て来ましたよ。爆弾を使う技術だと、建物の建築と建物の解体で、円形状に建物を形造れますね、建物の解体では爆破時に、色々な建物の破片が周りに飛び火しない様にする技術で円形状のくり抜き状態の建物を造れますね」といって、頷いた。ルイス警部は、眉一つ動かさずに、情報分析官のエイミーに「その建築会社は、スペインにあるのかね?」といって、視線を投げた。情報分析官のエイミーは、真剣な面持ちで、ルイス警部に「ええ、この円形状にくり抜き技術を持っている建築会社は、セビリア市内にありますね。この建築会社の名前は、スペイン語で“再建”ですね」といった。ルイス警部は、心を弾ませながら、情報分析官のエイミーに「ありがとう、これからその建築会社に向かう。その建築会社の住所を、僕の携帯電話に送ってくれ」といった。ルイス警部は、眼を輝かせながら、オルコット捜査官に「では急いで、“再建”とやらに行こうじゃないか、オルコットさん」といった。オルコット捜査官は、少し声を張り上げて、ルイス警部に「はい、ジョナサン警部、直ぐに向かいましょう」といって、二人は作戦室を後にした。ルイス警部とオルコット捜査官が、駐車場に到着すると、情報分析官のエイミーからルイス警部の携帯電話に“再建”の住所とそこまでの近道の事を連絡して来た。ルイス警部は、駆け寄って、携帯電話から住所と近道を見せながら、オルコット捜査官に「ここが目的地で、行き方はこの通りだ」といった。オルコット捜査官は、眼を凝らしながら、ルイス警部に「了解です、乗ってください。ジョナサン警部」といった。ルイス警部とオルコット捜査官は、警察車両に豪快に乗り込み、作戦本部の駐車場からセビリア市内へと走らせた。
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