#19. Possibility
「まずは、
「そうだね」
「今日パソコンは持ってきた?」
「うん。持ってきたよ」
俺とリナイエは背負ってきたリュックからパソコンを出し、電源を入れた。俺とリナイエが愛用するパソコンは
「とりあえず、あの手紙が俺に届いた2030年4月9日の映像を確認するか」
「そうだね」
「じゃあ、俺は東京、大阪、博多の三箇所を確認するから、リナイエは残りの二箇所、千歳と沖縄を頼む」
「了解」
俺とリナイエはそれぞれの作業を始めた。とりあえず、俺宛に探偵依頼が記載された紙を提出するためにリナイエが
特殊郵便ポストの周りに設置されている防犯カメラは、リナイエの光龍術によって存在を隠している。隠しているというか、この世界とは違う次元に存在するから、電子機器探知機などを使っても見つかることは絶対にない。
時折リナイエが持ってきた飴玉を食べながら俺とリナイエが集中して作業をしていると、二時間ほど経過していた。俺とリナイエのグラスの中は半分ぐらいまで減っていた。
「リナイエ、誰か郵便ポストに手紙を入れようとする者は見つかったか?」
「いや、見つからなかったよ。みんな、普通にポストの前を歩いて通り過ぎてただけ。誰も、ポストの前で立ち止まってなかったよ。拓也の方は?」
「俺もポストの前で立ち止まっていた人はいなかった。確か、あのポストに入れた手紙は
「うん。そうだよ」
しかし俺とリナイエが防犯カメラを確認する限り、2030年4月9日にポストに手紙を入れた者はいなかった。なんなら、ポストの前で立ち止まった者もいなかった。
何故だ?何かバグでも起きたのか?でも、未知の力、特殊能力にバグなんて存在するのか?機械とかじゃあるまいし。
「あのさリナイエ、念の為に三日前の2030年4月6日からもう一度確認してみてくれ。俺も確認するから」
「分かった」
三時間経過。
俺とリナイエのグラスは空になっていた。
「やっぱりダメか。リナイエは何故か分かるか?」
「分からないかな。強いて言うなら、あの手紙の送り主は姿を消していたとかかな。まあ、そんなことは普通の人間には無理だけどね」
「普通の人間は無理か」
俺は一度頭を抱えて考えた。すると、ある可能性に思いついた。
「なあリナイエ、普通の人間は姿を消すことなんてできないよね??」
「まあ、それはね。現実的に」
「現実的にそりゃ、そうか(笑)。まあでも、普通の人間でなければ姿を消すことは可能か?例えば、リナイエみたいに特殊能力を使える者とか」
「分からないけど、可能性はあるかも」
「特殊能力を使えるのはリナイエ以外にあと五人存在するはずだから、その五人の中の誰かが暗魔なのでは?」
リナイエは俺の発言に一度思考を巡らせた。
「やるやん、拓也!流石世界最高の名探偵、
「その呼び方、恥ずかしいからやめて」
どうやら納得してくれたらしい。
「確かに、ポストに手紙を入れようとする人物は防犯カメラに映ってなかったから、姿を消している可能性があるね。仮に姿を消していたとしたら、私以外の特殊能力を使う存在たちの誰かの可能性が高い。もしくは、その誰かが普通の人間の暗魔に力を貸したかの
「そうか。とりあえず、あの手紙には特殊能力を使うリナイエ以外の五人の誰かが絡んでるってことで話を進めよう」
「そうだね」
「それじゃ、とりあえず遅くなったが昼食にするか」
暗魔の正体は残念ながら分からなかったが、収穫はあった。
俺とリナイエは追加でカレーパン、メロンパン、焼きそばパン、フレンチトーストとアップルティー二つを注文して昼食を済ませた。
そして、俺たちの事務所の新しい拠点を探しに六時間ほど滞在していた喫茶店を出た。
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