#18. "Spirit"

 4月13日、土曜日。時刻は9:50。


 俺は今、リナイエと待ち合わせをしてる品川駅に来ていた。


 「おはよう。待った?」

 「いや、今来たところさ。それじゃあ、行くか?」

 「うん」



 俺はリナイエを連れて品川駅から歩いて5分ほどのところにある喫茶店に入った。

 この喫茶店は個室があり、今日はそこでリナイエと以前から決まっていた話し合いをしようと思っていた。防犯カメラや盗聴器がないのかを事前に確認しておいたからこの部屋なら安全だ。


 「俺はミルクティーを頼むけど、リナイエは何を飲む?」

 「私も拓也と同じで良いよ」

 「分かった」


 俺はリナイエの希望を聞き、店員さんを呼んだ。


 「ご注文はいかが致しましょうか?」

 「えーと、ミルクティーを二つお願いします。以上で」

 「かしこまりました」


 店員さんは俺たちの注文を承り、部屋の外に出た。これから俺とリナイエは極秘事項について会話するので、俺は注文の品が届いてから本題に移ろうと決めた。 


 「リナイエは最近学校どうだ?」

 「んー。楽しんでるよ。新しい友達もできたし」

 「そうか。それは良かったな」

 「拓也こそどう?誠一くんとか元気だった?」

 「俺も楽しんでるよ。友達が既に三人も増えたんだ。アイツは相変わらずのままだよ」  

 「そっか(笑)。今度、その新しくできた友達を私にも紹介してね」


 リナイエは家庭の事情で俺と違う高校に通っている。それでも「スピリット」が出現した際は、瞬時に俺の所へ移動することができる。これは俺とリナイエの契約によって、互いに互いのいる場所へ瞬時に移動することが可能になるのだ。


 「スピリット」とは、過去に俺が解決した事件の犯人のことだ。各事件の犯人は暗魔キラーロードによって暗殺された者もいれば、生きて刑務所にいる者がいる。暗魔は警視庁からの依頼によって犯人を暗殺している。もしくは、暗魔が犯行現場を自ら目撃した際にその場で暗殺している。罪を償って刑務所から出てきた人は、何者かによって力を得て俺を襲ってくる。しかも俺の名前や素顔、性別、年齢などを知っている。今まで俺を襲ってきた「スピリット」は十人を超えている。しかし彼らは自我を失っているため、世間には俺のことについての情報は漏れていない。また、戦闘する際はその場所の周辺にいる一般人をリナイエの光龍術こうりゅうじゅつによって眠らせ、俺たちについての記憶を消しているため俺たちの身元がバレることはない。



 コンコン


 注文の品を待ちながら互いの新しい学校生活などについて語り合っていると、どうやら届いたらしい。


 「どうぞ」

 「失礼します。ミルクティーをお持ちしました」

 「ありがとうございます」

 「では、ごゆっくり」


 店員さんは俺とリナイエの前にミルクティーとストローを置き、レシートをテーブルに置いて部屋をあとにした。

 俺とリナイエはストローをグラスの中に入れて、一口だけ飲んだ。


 「美味しいな」

 「うん」


 俺はもう一口飲んでから別の言葉を発した。


 「じゃあ、本題に入ろうか」

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