一瞬で奪われた幸せ……
場面変わって、死刑囚と
「初めてシャボン玉を見せてからは晴れた日は事あるごとにシャボン玉遊びをせがんできましてね。たまに3人一緒に『シャボン玉』の歌を歌ったりしてね。穏やかで幸せな日々でしたよ。この子のためには仕事を頑張れるっていつも思ってましたね。あの日までは」
「ああ。あの事件というか事故でしたか」
「ええ。真雪が小学校に上がるから入学式のための服を買いに行った日でしたよ。あの日に我が家のすべての幸せが崩れ去りました。あいつらのせいで!」
幸せだった日々を思い出し笑顔で語っていた崇人は忌まわしい記憶を思い出すと一変して憎しみの顔へと一気に変えた。
再び、始まる死刑囚の幸せだった頃の回想。だが、死刑囚が思い出しているその日の思い出は天国から地獄へと落ちた日の思い出……。
「パパー! どう? かわいくなったでしょ?」
「ああ、良いね! これなら皆からモテモテになるぞ?」
「でも、パパよりかっこいいのいるかなー?」
「いると思うぞ? まだ子供だけどな?」
「ふふふ。そうよ? 可愛いけどかっこいい男の子はいっぱいいるわよ?」
試着室で白色のブラウスと紺色のサロペットスカートを着けて見せてご満悦の真雪。それに笑顔で冗談を言い交わす崇人と美咲。
「じゃあ、これで決まりだな! これを買ってレストランに行くか!」
「そうね! 真雪の好きなハンバーグもあるわよ!」
「わーい! ハンバーグーハンバーグー!」
こうして試着したブラウスとサロペットスカートの購入を決め、支払いの手続きを済ませた崇人。
「しゃーぼんだーまとーんだー。やーねーまーでーとーんだー。やーねーまーでとーんでー。こーわーれーてーきーえーたー。かーぜかーぜふーくーなー。しゃーぼんだーまーとーばそー」
レストランに向かう車中で後部座席で歌う美咲と真雪。あの日からお気に入りの曲になっていた。だから、今日も歌う。
これを聞きながら崇人は幸せを噛み締めていた。しかし、幸せの絶頂はこの時までであった。
信号待ちの先頭にいた崇人たちを乗せている車。赤信号が青信号に変わり、崇人は車を進める……。しかし、運命は残酷だった。
ドーン! ガシャーン! と周囲に響くほどの激突音。
猛スピードで信号無視をした車が崇人の車に激突した。その勢いで崇人の車は横転した。
その瞬間、崇人の意識は途絶えた。
そして、意識を取り戻したのは7日後のことであった。
「崇人! 目が覚めたか!」
「父さん! 美咲と真雪は!」
「心して聞け。崇人」
「まさか!」
「ああ、そのまさかだ。美咲ちゃんと真雪ちゃんは亡くなってしまった。猛スピードで信号無視した車がお前の車に激突して横転してな……。即死だった……」
「そんな……」
「お前は奇跡的に一命をとりとめたがな……。しばらく病院で安静にしておくようにとの医者の命令だ。葬儀はこちらで既に済ませた」
目が覚めた崇人に告げられたのは無情の宣告だった。
「ぶつかった相手は?」
「あっちは無事だったみたいだな……。忌まわしいことに。飲酒運転、無免許だったそうだ……」
クソッ! なんで! 美咲も真雪も何も悪いことしていないのに! 殺してやる!
崇人の心にあったのは憎悪と復讐の念だった。
美咲、真雪。必ず
退院後、家に戻った崇人は霊前に向かって誓った。
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