第84話 きゃばり~ばとる
「むっ? 小太郎ですか?」
冬華が縦になったバスの最後尾を双眼鏡でのぞき込む。
「まぁ…この状況を考えれば確認するまでもねぇ…会長先輩たちだな」
「そもそも肉眼で見えてますけどね…ハッキリ」
雰囲気で双眼鏡を使いたいだけの冬華、むしろピントが合わずに苦労している。
「先生よー‼ 迅速かつ年長者から救出して頂戴‼ ナゥ‼ ピンチナゥ‼」
立花先生、窓から身を乗り出して脱いだ白衣を振り回す。
「救援要請アリです‼」
「いや…チッコイ先輩、その前に襲われてんだよな…アレ」
バスを這い上がろうとする河童の群れ。
「なんかアレですね…間近で見ると、こう…くるものがありますね」
向井君、どうも両生類は苦手なようだ。
「チッ‼ 釘バットでもあれば…悔やまれるぜ」
戦う気はある、しかし、素手では嫌だ、そんな青海。
「河童は…敵でしたか?」
なんとなく理解してきた冬華。
「敵だろ、めっちゃ襲われているだろアレ?」
「しかも…未確認生物って割に…群れで発見しちゃいましたね」
「あぁ…意外にもな…身体能力は互角と仮定しても…数的に圧倒的に負けてんだよな」
「向井‼ レーザー準備です‼」
「緑ですもん…無理ですもん…」
「使えねぇ…ここ一番で使えねぇ兵器ってガッカリだぜ…撃てねぇ核っていうか…抜けねぇ名刀っていうか…」
「エクスカリバーってその類ですよね」
「オメェの例えだよ‼」
「そんな僕が伝説の? いいすぎですよ~青海さん」
照れる向井くん、エクスカリバー扱いに満更でもない様子である。
「腹立つわ~…このチョコボール腹立つわ~」
そんな照れる褐色マッチョにイラつく青海。
「ゴチャゴチャ言ってないでレーザーはどうしたですか? 撃てないですか?」
頭上の冬華も不機嫌である。
「緑とか…茶色しかないので…ちょっと…無理です」
バカでも逆らってはいけない相手は理解できている。
「ちっこい先輩、長距離兵器が無理なら近接でってことになるんだが…」
「エクスカリバーこと向井の出番ということですね‼ やりますよ僕は‼ エクスカリバー向井と呼んでください‼」
「……エクスカリバー向井よ~…とりあえず蹴散らせてこいよ、大小入り乱れて30匹くらいいるぞアレ」
「ハッハハハ、問題ないですよ‼ 一振りで50匹は真っ二つにしてみせますよ‼」
妙な自信にムチ…満ち溢れている筋肉バカ向井くん。
「……早くいくです、小太郎達が食われそうです‼」
「むわぁ~かせて‼ エクスカリバー向井、いきまーす‼」
泥沼に突進する向井くん、当然引っ張られる青海と冬華。
「えっ? 俺も?」
「青海‼ どうやら一蓮托生です‼」
「DEATH~‼」
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