第81話 めに~・めに~・ゆ~・えむ・え~
「底なし沼なんて、この世にあるわけないじゃないですか‼」
小太郎、現実の不安を完全否定するように声を荒げる。
「まぁ、でも沈みっぱなしですわよ」
とりあえず、一番後ろにいることで、他より余裕がある春奈。
沼の圧でバスのドアや窓がミシッと音を立て、ズブッとゆっくり沈んでいるのは事実である。
「あぅあぅあ…」
ゾンビ運転手など、浸水してきた沼に半分沈んでいる。
「上だ‼」
夏男が、ほぼ縦になったバスの車内で椅子を伝って後部座席へ移動を始めた。
「まぁ、来ないでいただきたいですわ」
後部座席から夏男に向かって空き缶を投げつける春奈。
カンッ…コンッ…
「よせ‼ 今は、そういう時じゃない‼」
ゴンッ…
「あっ?」
鈍い音がして夏男が手を滑らせた。
「あっ、ソレはまだ飲んでない先生の缶チューハイよ」
ドブンッ…
沼にハマった夏男。
「安心しましたわ…なんか下から迫って来るもんだから、生理的に受け付けませんでしたの」
「……しましたの…じゃねぇ‼」
尻から沼にハマって身動きが取れない夏男。
「ハッハッハッ‼ 夏男よ、暴れると…沈みが早まるぞ、待っているがよい、私が紐を投げてやろう、ほらっ」
秋季がポイッとロープを投げた。
「秋季さん…ロープごと投げても…反対側を持つなり縛るなりしないと…」
ただ投げただけだった。
「ハッハッハッ、すまん、すまん夏男よ、うっかりしていたハッハッハッ…ん? 夏男が消えたようだが?」
「残念ね…手遅れだったようね、先生、特に思う事はないけど」
「とりあえず、登りましょうか」
最後尾というか車内の上部で待つこと数分、ようやく底に着いたようだ。
「止まりましたね」
「うむ、何よりだ」
「危ないところでしたわ、後2mってところでしたわね」
「先生、覚悟しちゃったわよ」
「うむ、人身御供を捧げた甲斐があったというものだなハッハッハッ」
どうやら夏男のことらしい。
「窓から外にでましょうか」
小太郎がバスの窓を開けた。
「………」
窓の外にいたナニカと目があい、フリーズした小太郎。
ドプンッ…。
窓の外にいたナニカは泥沼に潜って消えた。
「どうした小太郎会長?」
「……いた…いました…河童」
振り返る小太郎、さっきより顔が青ざめていた。
「まぁ、小太郎君は河童を見ましたの? あらら」
コポッ…コポポポンッ‼
沼の表面がモコッと盛り上り、ソチラコチラで河童が顔を出す。
「んぎゃぁぁああ‼ 思ってたよりいっぱいいるー‼」
立花桔梗 絶叫の不気味さ。
「まぁ? 池ではなくて沼に住んでらっしゃったのね、どうりで池では見つからないわけですわ」
春奈が納得できたようにポンッと手を叩いた。
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