第80話 ご~・とぅ・ぼとむれす
冬華の一声で、立ち上がった向井くんと青海、2人で騎馬を組み冬華を担ぎ上げる。
「逃がすなです‼ 全速前進‼」
どしゃぶりの中、冬華達は林の中へ進んでいった。
「まぁ…行ってしまいましたわ」
冬華が投げだした双眼鏡を覗きながら春奈が心配そうな顔をする。
「そうね、風邪ひかなきゃいいけど、先生は心配よ」
ずぶ濡れの小太郎、タオルで髪を拭いている。
「大丈夫なんじゃないですかね、皆、必要以上に丈夫だから」
「ハッハッハッ、小太郎会長よ、それは迂闊かもしれんぞ」
「何がです?」
「河童には毒がある」
秋季がパンッと扇子を広げた。
「それは確定情報なんでしょうか?」
「否定する材料がない以上、肯定と考えていいんじゃないだろうか」
「まぁ大変…どうしましょう…胃薬しか持ってきませんわ」
「先生、絆創膏しかだせないわよ」
「さて…絆創膏と胃薬で毒を中和できるのか…検討せねばなるまいな…」
「検討いらないですよね、無理です」
「あらっ? でも嚙み口に絆創膏は有効ですわ」
「そうね、先生、何枚でもだせるわよ」
「うむ、重ね貼りも可能ということか…はっ!? 傷口に胃薬をあてれば…あるいは?」
「まぁ、目からうろこですわ‼」
「先生、可能性を感じるわ、傷口から吸収みたいな?」
「で? どうするんですか? 後を追うんですか? 待つんですか?」
3バカの会話にイライラしてきた小太郎。
プシュッ…
バスのドアが開いて泥まみれの夏男が入ってきた。
「行く以外の選択肢があるのかい? フレンズとして」
天を仰ぐことに飽きたようだった。
ガタガタガタ…
「あうあ?」
嫌がるゾンビ運転手を脅しながらバスで林を進んでいく小太郎達。
「揺れるとかのレベルじゃねぇぞ‼」
緩れるバス車内、ノンストップ夏男の文句である。
「うむ、酔っている暇も与えないな…」
「先生、一周回って酔いが醒めたわ」
「………」
春奈、最後部で無言。
「小太郎‼ スピードを落とせと伝えろ‼」
「あの~…言い難いのですが…ブレーキがスカスカなんですけど…」
小太郎の顔が青ざめている。
決して乗り物酔いではない。
ゾンビ運転手も心なしか青ざめているような…。
困ったことに下り坂での出来事である。
減速のためにブレーキを踏むわけだが、減速しねぇで加速していくバス。
揺れるバス。
加速したバスは、林の中で木々をなぎ倒し、まぁまぁ森林破壊を引き起こし、沼に突き刺さるように飛び込んだのである。
「停まった…」
斜めった車内、夏男が椅子にぶら下がり確認するように呟く。
「それは、めでたいのだが…うむ…だが…沈んでいっているような?」
「間違いないわ、先生解るのアルコールが抜けたから」
「まぁ、底なし沼ですの?」
後部座席からヒョコッと顔を出す春奈、どうやら彼女も回復したらしい。
「底なし…沼?」
そんなもんが、この世にあるのだろうか?
ズブズブと沼に飲まれるバスの中で考える小太郎であった。
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