第76話 あい・うぉんと・きゅ~かんば~
夏男が小太郎の靴下を春奈の生脱ぎと勘違いしたまま嗅ぎ、リフレッシュして戻ってきた。
どしゃぶりの雨、バスの車内は食べ物もなく、もう帰ればいいんじゃないかと皆が思う中で、ただ一人、双眼鏡で池周辺を観察している者がいる。
そう『
ゾンビ化していない人類の中でも群を抜いて自由な少女。
現在、認知度で言えばモースト・オブ・ジャパンUMA『河童』を捕獲及び校内飼育するために捜索真っ只中なのである。
「どうやら池の中にはいないようです…罠を仕掛けるです」
「なに? どしたの冬華ちゃん」
よせばいいのに、声を掛ける夏男。
ジーッとデカい目で夏男を観察するように見る冬華。
「……なに? なんか照れる…一年越しの…一目ぼれ?」
「一年掛ったら一目ぼれにならねぇだろバカか」
「あらっ、確認無用な馬鹿ですのよ夏男さんは」
「種の保存という視点から人類最後の1人になっても夏男だけは保存の必要が無いと断言できるほどの逸材なのだハッハッハッ」
「逸材って…照れるな俺」
「バカって都合のいい耳しているのよね先生、経験で解るのよ」
「だから生きていけるんでしょうね、バカって生きることに疑問を感じなさそうですものね」
小太郎、冷ややかな目でウッキウキな夏男を見ている。
「存在に疑問を感じないか…この時代ってそうなんだ…僕は…僕が生きていた未来では…」
ちょっと悲惨な未来を思い出した向井くん、軽く涙目である。
(未来って一体…)
その涙に自身の未来を想像することが怖くなる小太郎であった。
「オマエ…キュウリを取ってくるです‼」
ジトーッと夏男を見ていた冬華、ビシッと夏男を指さし突然キュウリ調達を命じた。
「……キュウリ…変わった告白だな…俺、こんな告白初めてかも」
「告白自体、初めてでしょう夏男さん…」
「まぁ、なんて、あつかましい‼ 存在があつかましいですわ」
「夏男、貴様はゾンビも避けて通るほどの男だぞ、告白されたことなどあるまい記憶違いだハッハッハッ……妄想もほどほどにな」
「そうね、先生も真夏のゾンビの方がマシって思うわ、心からね」
「貴方にだけは、明るい未来は訪れないですよ、未来人の僕が保証します」
「すげぇな…言葉のナイフが千本降り注いでいるようだぜ…さすがバカの強メンタルだぜ」
皆の帰りたいのに帰れないイライラが夏男にぶつけられた。
「冬華はオマエが嫌いです、オマエが河童の好物であるなら冬華は迷わずオマエをエサに河童を持ち帰るのです…早くキュウリを持ってくるです‼」
「そんな…そんなに責めなくてもさ~…うわぁぁぁぁあーん」
子供のように泣きながらバスの社外へ飛び出した夏男。
「アレはキュウリを探しに行ったですか?」
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