第75話 ふ~ず・そっくす? いっつ・まいん‼

「小太郎…」

「なに? 冬華」

「冬華、キュウリが必要なのです‼ なぜならば……」

 真顔でチッコイのがキュウリの必要性を説いてきた。

「いやダメだ、ダメダメだ」

 ずぶ濡れで青海がバスに戻ってきた。

「して河童は?」

 秋季が青海に問う。

「だからダメだ‼ フナと鯉しかいねぇ、メガネの周りは鯉だらけだぜ」

「まぁ、そのまま炒飯と一緒に喰われてしまえばいいのですわ…骨も残らず」

「フライドチキンでもの音が残るというのになぁハッハッハッ‼」

「僕のレーザーなら骨も残さず焼き切りますが…どうします?」

「いや…雨天は無理だろ…どじゃぶりだと、アチッ‼って程度じゃねぇのか?」

「試してみますか?」

「…まずは、池の真ん中の伊達メガネに目掛けて、やってみてくんねぇか?」

「いいでしょう…僕の実力を見せつけてやりますよ」

「まぁ、率先して手伝いますわ」

 春奈がバスを降り、夏男に白い靴下をお盆で渡した。

「マジッ?」

 喜ぶ夏男、靴下を鼻につけ深呼吸している。

 その姿を確認して戻ってくる春奈。

「僕の靴下…そういう意味でしたか…春奈先輩」

 小太郎、春奈に白い靴下を強奪されていた。

 春奈が無言で向井に向かって力強く頷く。

 スクッと立ち上がった向井。

 謎の筋肉アピールをムキッと決めたのち、ゆっくりとバスを後にずる向井くん。

「レーザーに筋肉関係ないと先生は思うわ」

 立花桔梗の酔いはじめの一言を最後に、誰も喋らずに池の中央で立つ夏男を見守ることにした。

 池の畔に進んだ向井くんがムキッとポーズを決め、照準を夏男(夏男の顔面にある小太郎の生脱ぎ靴下)に定める。

「ターゲット・ロックオン‼ 狙い撃つぜ‼」

 キュィィィーン……ビシュンッ‼

 鮮やかな蛍光オレンジの光線が一直線に夏男(夏男の顔面にある小太郎の生脱ぎ靴下)を貫く…いや…貫きはしなかった…。

「アッチッ‼」

 ジュンッ…

 池の中に顔を突っ込む夏男。

 鯉に顔面を吸われまくる夏男。


 ………

「いやぁ~角質が綺麗に取れた気がするわ俺」

 バスに戻った夏男の第一声である。

「新たなクレンジング法を確立したようで、いやはや幸運だったな夏男よハッハッハッ」

 秋季の高笑いで夏男を迎えるバス車内。

「顔…真っ赤だぜエロメガネ先輩」

「角質除去はレーザーなの? 鯉に吸われたからなの? 先生、そこのところ気になるわ」

「まぁ、レーザーでしたら威力を落としてやってもらいたいですわ」

「生まれ変わった気分だね、なんか顔の凹凸が無くなった気がするんだよ俺」

「それだけ腫れてりゃそうかもしれませんね」

「腫れてる? そうなの?俺腫れてるの? ところで小太郎、オマエなんで裸足なの?」

「それは…聞かない方がいいと思うぜ…メガネパイセン…」

 性的思考が満たされているのか満足げな夏男の身持ち悪い笑顔、少しだけ同情する青海であった。





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