第72話 だ~く・すかい

「ココに河童がいるですか? 小太郎」

 どんより淀んだ空に負けないくらいの淀みを見せるデカい池の前。

 河童を獲りに行くと言い出した本人に存在を確認されるとは…。

 まさかの河童のいるところに連れていけなど無茶をサラッと言ってのける冬華、その問題児が隊長を務める『河童捕獲隊』すでに捜索済みであることを前提に発足されているので支給された装備は虫取り網である。

「おいおい、チッコイ隊長、河童って人間と同じくらいの身長だぜ? 虫取り網で捕獲ってのはちょっと無理があんじゃねぇの?」

 早速、青海が疑問を口にする。

「そうですわね~、そもそも河童は虫じゃないのでは?」

「うむ、魚とり網のほうがよかったかもな」

「アレで良かったのよ、砂浜からブワーッと投げてドバーッと魚を捕まえるヤツ」

 立花桔梗、言葉に擬音が多い。雰囲気で生きているからだ。

「僕のレーザーで瞬殺ですよ‼」

「バカなのです‼ 脳筋はバカです、河童は緑なのです」

「皆さん…見たことがあるかのようなことを言ってますけど…河童ですからね‼」

「だ~か~ら、オマエ河童を知ってるからココに来たんだろ? 小太郎」

「知ってるわきゃねぇだろうが‼」

 夏男の一言で小太郎がキレた。

「大体、呼んでねぇ奴が偉そうなこと言うんじゃねぇ‼」

「小太郎…オマエ…ソレ言う? そこから蒸し返す? グスッ…涙で何も見えねぇぜ…俺」

「見えなくていいので、そのまま前進して池から出ないでください、もう2度と…」

「まぁ名案ですわ」

「うむ、夏男、貴様なら池に浸かって3年もすれば、そのまま河童になったりしてなハッハハハ」

「池の中での3年です‼ 河童の生態に新たな説が浮上した瞬間です‼」

「エロがっぱとか言うしな…メガネパイセン、イケんじゃね?」

「池だけにね」

 立花桔梗が締め、一同が軽い笑いに包まれた頃。


「あぅぁ…うぁ…うっ」

「弁当届きましたよ皆さん」

 向井くん、ゾンビ配達から弁当を受け取っていた。

「冬華が頼んでおいたです‼」

「そういうことなら昼食にしましょう、雨降りそうだし」

 立花桔梗、早速蓋を開ける。

「…なにこれ?」

「あん? 炒飯じゃねぇか…」

「まぁ、ワタシも炒飯ですわ」

「いや、春奈さんだけ違うとかないでしょう…」

「うむ、しかも冷めてる‼」

「冷めた炒飯とか、ちょっと…食欲が…あっ僕のレーザーで温めるとか」

「無理でしょ、蒸発するよね、向井君のレーザーじゃ赤外線じゃないからね」

「つまりコイツは電子レンジ以下ってことだな」

「オマエは早く池に入るです‼ 河童になったら上がってきていいです‼」

「そんな…冬華ちゃん」

「そもそも頭数に入ってないからオマエの分は無いのです‼」


 同時刻、田中校長、食堂で出来立て炒飯を食べておられた。


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