第70話 あうと・おぶ・ざ・ぶる~
「やっと終わった…」
ダラダラと寄り道の方が多かった食堂の清掃が4日間の時を経てようやく終わった。
小太郎がグタッと倒れるように食堂の椅子に腰を下ろす。
数日の疲労が抜けてないのである。
「なんかアレだな、じゃんけんばっかしてたな」
夏男が小太郎の肩をポンッと叩くが、もはや振り払う気力もない小太郎。
「いやぁ~、この苦労も、この賑わいを見ていると報われる気がするね~」
呑気な田中さんにイラッとはするものの言い返す気力もないのである。
「あぅぁあーあうっ」
「はいよ、炒飯一丁アルね、アハッ…アッハハッ…ハッ」
ゾンビで賑わう高校の食堂。
皆、炒飯を食べている光景、見ようによっては平和な学園である。
「おおぅ…混んでるじゃねぇか‼」
青海がヒョコッと食堂に顔を出した。
デカデカと達筆で『炒飯一択』の4文字。
もちろん夏男が書いたのである。
「チャーシューメンひとつです‼」
テーブルで冬華がバイトゾンビに注文する。
「あぅあ…うぁ…うっ」
「はいよ‼ 炒飯一丁アルね‼」
バイトゾンビのオーダーは全て炒飯で強制的に置き換えられる理不尽な店なのだ。
「冬華、チャーシューメーンです‼ 炒飯じゃないです‼」
運ばれた炒飯、バイトゾンビにクレームを入れる冬華。
「あうっ…」
バイトゾンビが夏男の書いた達筆な『炒飯一択』の文字を指さす。
周さんゾンビ教育ができている証拠である。
「腹が立つですー‼ 夏男めー‼」
炒飯をモグモグと食べつつ、なぜか夏男に矛先を向けた冬華。
無駄にデカデカと書かれた『炒飯一択』の筆文字が苛立つのである。
また無駄に達筆な書体と夏男のバランスが苛立たたせる要因でもある。
脳内で夏男がドヤ顔している冬華。
「ラブレターも筆で書いちゃうぞ♡」
そんなセリフまで吐く脳内夏男。
「河童のエサにしてやるです‼ けぷっ…」
可愛らしいゲップとUMAな捨てセリフを吐いて食堂を後にした冬華。
もちろん無銭飲食である。
ガラッと生徒会室のドアを開けた冬華、開口一番
「河童を捕まえに行くです小太郎‼」
「……なに?」
口に運んだジャムパンを落としそうな小太郎。
「河童です‼ 冬華、河童を見たことがあるのです‼」
「ハッハッハ、コレは豪儀なことだ、時に冬華くん…捕まえてどうする気なんだ?」
ちょっと考えた冬華
「…飼うのです、ソコで‼」
窓から見えるプールを指さす冬華
「逃げると思うな~俺」
答えた夏男をキッと睨んだ冬華
「餌付けするです‼」
「きゅうり? あ~学校で育てる?」
立花先生が話に入ってきた。
「エサはオマエです…夏男‼」
ジャムパンを食べ終えた小太郎が冬華に尋ねた。
「河童って…肉食なの?」
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