第61話 お~だ~

「アイヤー…杏仁豆腐なくなったアルよ…」

 町中華『カンカン』店内でデザートとして提供されている『杏仁豆腐』を全て平らげた夏男。

 焼けただれた口内及び胃腸系の修復に充てたのだ。

 夏男が吠える、閉店した店内で。

「ふぅぉおおおおー完全復活‼」

 さっきまで泣きながら杏仁豆腐を食べていた夏男を見ていた田中さん。

「そうなのか?」

 他人の心配より食い過ぎで腹を壊した自分の心配をしたほうがいい。

「さぁて…どうしてくれようか…」

「恨んでいるのか? もしかして? 半分以上は自業自得じゃないのか?」

「過程なんざどうでもいいんだよ‼ 結果がすべてでしょうが‼ ストーキングからの相思相愛でしょうが‼」

「それは容姿のいい奴だけだよ夏男くん…」

「いいんだよ‼ 愛なんざ後から産まれるもんなんだよ‼」

「それは大金持ちだけなんだよ夏男くん…」

「いいんだよ‼ 金なんざ現在は必要なくなったんだよ‼」


「お代払うよろシ…お金いるアルよ…デザート代込みで26000円払うネ」

 店主が金をよこせと手を差し出す。

「ん? 金とか? 」

 夏男の目が点になる。

「夏男くん、デザートまで食っちゃうから~」

 田中さんは自分の分だけ1000円払った。

「有料とか? 聞いてませんけど?」

「無銭飲食アルか?」

 そういやゾンビも金払っていたような…時折チンッとレジの音が聴こえたような…。

 ボルケーノで、それどころではなかったが。

「よぉしわかった‼ 金を取り立てにいくぞ‼ お前等付いてこい、奴らにキッチリ払わせてやるぜ‼」

 夏男が店をスタスタと出ていく。

「大半はキミが食べた杏仁豆腐だと思うけどね」

「付いて行けばいいアルか? オマエは払えないことだけは理解したアルよ」

「やぁ~ってやるぜ‼」

 夏男がガラッとドアを開けて店の外へでる。

「なにを? アイツ、何をヤルつもりアルか?」

 お玉を持ったままの店主が田中さんに尋ねる。

「さぁ?ところで電子マネーかクレジットカードは使えますか?」

「ウチは現金のみアル‼ ゾンビも人もネ‼」

 キッパリと答える店主。

「そうですか…じゃあ…彼に付いて行くしかないな~僕も…」

 仕方なしに夏男の後に付いて行くことになった田中さんと店主。

 ズカズカと進む夏男、その後ろに田中さん、最後尾に逃げないかと見張る様に付いてくるカンカン店主。

 絵に描いたような高級旅館を前に立つ。

「たのもぉー‼」

 広い玄関で大声を上げる夏男。

「アイツは何を注文する気アルか?」

「さぁ? ところで電子マネーかクレジットは使えるんでしょうか?」

「知らんアル」


「あぁうぁ…あぅあ…あぅあぁ」

 女将ゾンビが慌ただしく夏男の対応していた。



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