第59話 さんきゅ~・ふぉう・み~る
冬華の足元に置かれたコンビニの袋、気になった小太郎が冬華に尋ねた。
「冬華、ソレ、何買ってきたの?」
「ウヌッ…コレですか? そうです‼ 忘れてたです‼」
炒飯を手に持ったまま店内を歩き回る冬華。
「青海‼ レンジはどこです‼」
「知らねぇぜチッコイ先輩、アレじゃね? 厨房にあるんじゃね?」
「チンしてくるのです‼ 青海‼」
ガサッと冬華が取り出した『冷凍麻婆麺』
「諦めてなかったんだね」
「冬華は麻婆麺が食べたかったのです‼」
炒飯を持ったまま立ち上がった青海。
「おぅ、厨房借りるぜ」
「何アルか?」
厨房で忙しく鍋を振るう拉麺男が驚いている。
「あっ? レンジ借りるだけだよ‼ あと…お湯くれ」
チンッ‼
厨房から青海が麻婆麺と味噌ラーメン(カップ)を持って戻ってきた。
「ほらよ、チッコイ先輩」
「ご苦労です‼ 麻婆豆腐にはコショウです‼」
「やめときなさい冬華ちゃん また夏男くんが喜んじゃうわ」
立花先生が冬華の前からコショウを取り上げた。
「アハッ…ハガァ…アハッ」
顔が真っ赤に変わった夏男、ボルケーノと格闘中である。
田中さんVS向井くんの炒飯対決は続いていた。
「もう4杯目アルよ‼ 疲れたヨ」
「まだまだー‼」
「もう一丁こいやー‼」
コッチはコッチで顔色が悪かった。
冬華が麻婆麺(レギュラー仕様)を食べ終わり、田中さんが6杯目で敗退した頃。
「食ったし帰ろうぜ」
青海が割り箸を咥えながら席を立った。
「そうね、帰りましょう」
「結構、遅くなってしまったな…今日は温泉宿で泊まるというのはどうだ?」
「まぁ名案ですわ」
「そういうことです‼ 夏男‼ 早く食べるです‼ 皆待ってるです‼」
「えっ? ヒクッ…エグッ…」
もう炒飯というかラー油の上に米が浮かぶ冷めた溶岩地帯のような器を抱え、泣くだけの夏男。
「待ってて…くれるの?」
「……そうでしたわ、待つ必要などなかったですわ」
「ハハハッ、夏男よ、貴様という奴は、立場と身分を弁えているのだな‼ 天晴‼」
「じゃあ、僕らお先に…後でゆっくり来てください」
小太郎がシレッと夏男の横を通り過ぎる。
「夏男‼ 冬華の愛を残せば…解っているDEATHね‼」
冬華が舌をベロッと出して喉を指で掻っ切るポーズをとる。
「あの…場所解りますか? 来るときにあった旅館ですよ」
向井くんが夏男に行き先を伝えた。
店内に残された夏男、そして食い過ぎてトイレから出てこない田中さん、3体のゾンビを残して店内は静けさを取り戻した。
「アイヤー、お客さん、早く食べるネ、もう閉店時間アルよ‼ トイレの人を連れて帰るよろし‼」
「ヒクッ…エグッ…」
ゴクッ…ゴクッ…‼
一思いにボルケーノを飲み干した夏男、カシャンッと器をテーブルに置いて吠えた。
「あぁぁぁぁああぁぁぁーーーーー‼」
ベロベロになった舌と唇
「ご~ちそう…さまでしたーーーーーーー‼」
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