第55話 ちゃいに~ず・れすとらん
「道合ってんのかよ~?」
学校を出発して2時間、すでに青海は疑いだしていた。
バスの運転手(ゾンビ)ではではない。
田中さんのことをだ。
完全に絡み口調で田中さんの顔を下から覗くように睨みつけている。
「そうだぜ田中さん、リュックのお菓子も無限じゃねぇぜ‼」
チンピラ予備軍と性犯罪者予備軍のコンビは性質が悪かった。
人生において絡みたくない2大巨頭が田中さんへ矛先を向けた。
「冬華、ポッキーが食べたいです…店があったら寄るのですよ‼」
ゾンビ運転手の帽子をパンパン叩く冬華。
「あぅあ~…うぁ?」
「店ねぇ…先生思うのよ、こんな山奥に店とかあるのかしら?」
バスが山道を走り出して1時間。
バス酔いした夏男が、奇跡のV字回復を遂げて20分、今、バスは完全に迷走していた、人どころかゾンビも歩いてねぇ山奥で…。
「迷うってこういうことなんですよね~」
よせばいいのに呑気に呟く田中さん。
「テメェ‼ そもそも運転手に道を伝えたのはテメェだろうが‼」
沸点の低い青海が早々にキレだす。
「そうよ‼ ナビゲーターがアテにならないって、どういうことかしら‼」
「困りましたわ~、もうポッキーがありませんのに…」
「全部食ったの? 買ってきたの俺だぜ」
夏男がリュックを確認する。
「もう無いのです‼ 冬華がおおかた全部食べたのです‼ ケプッ」
後部座席で横になっている冬華、満腹感で眠くなっている。
「これから中華料理屋に行くというのに、なぜ君たちは満腹になっているんだい?」
「その中華料理屋にたどり着かないから満腹になっている人が出ちゃったんですよ田中さん」
「うむ、小太郎会長、さすがであるな、見事な現状把握‼ 天晴‼」
「もう木も見飽きたわ先生…そうだ、向井くん、ビームで薙ぎ払いなさい‼」
「おぉう、名案だぜ先生、見通しもよくなるしな、もしかしたら目的地も解るかもしれねぇ‼」
「そうですか…では森を白くしてください最大出力でイキます‼」
「まぁ……誰が、どうやって白くしますの?」
そんな堂々巡りの後、森を抜けたバスは見知らぬ街の夜道を走っていた。
「抜けたはいいけどな…ココであっているのかよ…おい‼」
「見覚えはあるよ、確かに、さっきのコンビニには見覚えがある」
「コンビニなんて、どこでもあるだろうが‼ 田中さんよー‼」
空腹も手伝い苛立つ青海と呑気な田中さんの、やりとりは無限ループのように続いている。
「だから、そのコンビニで買い物しようって僕は言いましたよ」
小太郎も不貞腐れている。
ジロッと夏男を睨む小太郎。
「なんだ? その目はー‼ 俺のせいなのか?」
「そうですわ、アナタが炒飯食いに行くんだからと言ってスルーさせたのですわ‼」
バスは険悪な空気をため込み、その元凶、田中さんに伝わっていないという理不尽を混ぜて街を行く…。
「うむ? アレじゃないのか…その中華料理屋とやらは?」
秋季が指さす窓の向こう。
一同が目を凝らす。
「絵に描いたような町中華だな…」
夏男が呟いた。
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