第54話 すく~る・とりっぷ
「ほぅ…そんな店が残っていたとは…初耳ですな田中さん」
額に絆創膏を貼った夏男、もっともらしくフムフムと頷く。
「いや…キミには昨夜話したんだが…」
「俺は過去を振り返らない男なんだ」
「そうですね、馬鹿だから…過去なんて覚えてないんですよね夏男さんは」
「うむ、間違えないな‼ 全部忘れるから今を生きているのだからな夏男は、ハッハハハハ、いや天晴」
秋季が扇子で夏男の額を扇ぐ。
「ヘヘッ…だな」
満更でもない顔で顔で照れ笑いする夏男。
「まぁ呆れた、遠回しに馬鹿と言われているのに、あの笑顔…気持ち悪いですわ」
「直接、生徒会長さん、馬鹿って言ってましたよね」
「あぁ…
「冬華聞いたことあります‼ バカは死ぬと治るらしいのです‼」
「違うわ、冬香ちゃん、死んでも治らないのよ先生、夏男くんを見ていると、よく解るわ、死んでも治らないんだってね」
「なんだよ皆、不治の病ってか? アッハハハ勘弁、勘弁ってね」
「まぁ、屈託のない笑顔ですこと、試しに殺してみますわ今すぐにね」
春奈がニコニコしながらアゴで向井にビームを撃てと指示する。
「……いや…白くないと…ビームはだせないので…」
「いや、よく聞いてくれ‼ 生存者がいたんだ、それが言いたいんだ僕は‼」
声を荒げる田中さん、夏男がゆっくりと振り返り言い放つ。
「生存者…ほぉ…昨夜も言ったが~‼ 男なんざ用事はねぇんだよ‼」
「…おっ…覚えてるんじゃないかキミはー‼」
そんな生産性の無い時間をグダグダと過ごして夕日が空をオレンジに染める頃…。
「解った、解った、じゃあ炒飯が食えれば満足なんだな? 田中さんとやらは」
夏男が渋々、了解して翌日、その中華料理店へ行くことで解散となった。
「はい皆揃ってるかしら~?」
立花先生が校門前で点呼をとる。
「小太郎く~ん…春奈さ~ん…冬香ちゃ~ん…青海く~ん…向井く~ん…生徒問題な~し……部外者、秋季く~ん…田中さ~ん……と後、コレね…全員確認と」
「俺…だけコレ扱い…でもハーイ‼ 夏男、ココにいま~す‼」
元気よく手を挙げてアピールする夏男。
昨日、男なんかに会いたくないと最後までゴネた夏男、遠足気分で参加しているせいかウッキウキである。
「冬華、あの黄色いリュックが腹立つのです‼」
「まぁワタシは、水色の水筒がイラッとしますわ」
「じゃあバスに乗り込んで頂戴、今日のお昼は中華よ‼」
立花先生がバスに乗り込み、ゾロゾロと皆が続く。
「じゃあ小太郎君、運転手に行き先を伝えるのよ」
「僕がですか? 田中さんお願いしますよ、あなたしか場所を知らないんだから」
「心得た‼」
15分ほどゾンビに行き先を説明した田中さん、とりあえずバスは走り出した…。
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