第53話 か~どげ~む
「誰も来ないな…」
翌日、シレッと校長室で皆の登校を待っていた田中さん。
能力『リーダーシップ』なんざ発動させなくても永遠の空白ポジション、それが校長である。
時刻は午前10時を回った頃、座り心地のいい椅子から立ち上がり、校舎の様子を見て回ることにした田中さん。
廊下も教室もゾンビ…ゾンビ…ゾンビである。
生徒ゾンビ、教員ゾンビ、用務員ゾンビ、3階の奥の部屋、、妙に騒がしい生徒会室だけに人間がいる。
そう、いつもの面々である。
「俺トップー‼ 昼飯おごれよー‼ そして買ってこい‼ 俺、餡かけ炒飯‼」
「…夏男さん…UNOって言ってないですよね」
「……言いました~……小声で‼」
「周知されなければ言ってないのと同義です、未来でも」
「まぁ、存在がアヤフヤな未来人が周知されてないとか言ってらっしゃいますわ」
「どの口が言うですか‼ ツチノコみたいな存在の未来人が‼ 冬華は…冬華は…夏男の一番あがりを認めません‼ 冬華はペロペロンチーノを食べるのです‼」
「ハッハハハ、夏男よ、もはや言った言わないではないのだよ、世界はオマエの一番など認めんのだハッハハハ」
「世界が…認めねぇのか…マジか? こんな世界になっても居場所がねぇ奴いるのか?」
「先生、待ってるんですけど‼早く2枚引きなさい‼」
「不憫‼ 俺…不憫‼」
夏男の目からブワッと涙が溢れる。
「涙で前が見えない…明日も見えない…メガネかけていいですか? 2枚引くためにも…」
夏男が上着の内ポケットからメガネを取り出そうとした瞬間。
サクッ…
対面に座っていた春奈が投げたUNOのカードが夏男の額に刺さった。
「ドロー4…」
夏男の隣に座っていた青海が刺さったカードを見てボソッと呟いた。
ドアの小窓から様子を見ていた田中さん。
ガラッと大きめに音を出して生徒会室に入ってきた。
「何やら、食事の話をしていたようだが~」
「食事の話じゃねぇ‼」
額のドロー4をプスッと抜いて夏男が吠える。
「そうですわ、この男が、この地球に存在してはいけないという話をしていたのですわ」
「宇宙船地球号には不要なのです‼ 宇宙へ不法投棄するです‼」
「違いますよ皆さん、私が未来人だという証明を…」
「すげぇ、カードって人に刺せるんだ‼」俺にも教えてくれよ‼」
「先生、絆創膏だせるけどいる?」
「おはようございます田中さん…今日はどうして?」
小太郎だけが相手をしてくれる。
「いやね、ほらっ食事の話をしていた君たちに耳寄りなナウでホットなインフォメーションを教えようかと思ったんだが…」
「ナウでホットとは聞かずにはいられんなハッハハハ、放してみたまえ…えっと…誰かさん」
秋季は両手にいっぱいのカードをポイッと捨て扇子をパンッと広げた。
(逆転不可能なくらいの量だな…負け確実だったんだな、この子)
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