第49話 あいる・び~・ばぁ~っく

「いたわね、確かに、先生覚えてるわ」

「よくは覚えてませんけど~タコヤキと~関係が関係があったような~気がしますわ」

「俺は病院で同室だったぜ、あんま覚えてねぇけど」

 秋季・春奈・夏男の印象である。

 件の人物それは『田中 次郎』

 存在感の薄さから発現した能力『リーダーシップ』

 どのグループにおいても『〇長』になれる男である。


 ヒュォーッ…

 街はずれに昭和な風が駆け抜ける。

「帰ってきたぜ…アイルビーバック」

 英語が正しいか否かは問わないでいただきたい。

 帰ってきたのだ…旅立った男が。

 昭和の風を纏う昭和のイケメン『田中 次郎』ギターを背負ってカウボーイハットを被っている。

 極めつけはパンタロン…。

「帰ってきたぜ…アイルビーバック」

 2度目のアイルビーバックだが、また帰って来るぜ…帰ってきちゃってから言うセリフでもない。


「奴らは元気かな…懐かしい匂いに惹かれて帰ってきちまった」

 真夏の腐敗臭でも嗅ぎ分けたのか?田中 次郎、今、堂々の帰還である。


 ………

「まぁ、元気にしてれば何よりじゃないですか?」

 小太郎が興味なさそうに締めようとしていた。

「そうね、名も知らぬ男だし、先生はどうでもいいわ…元気なら」

「田中…田中…ソイツは俺にこの街を教えた奴じゃねえか?」

 青海が記憶を辿る。

「えっ? 青海くん田中さんを知っているの?」

 小太郎が青海に聞き返した。

「その男は…こう白い裾の広がったジーンズにギターを背負った30年前なら、モテたかもしれないな~ってヤツか?」

「ハハハハッハ、それがな青海後輩…誰も顔を覚えてないんだよ、これが‼ ハッハハハ」

「そういう人だったかもしれないし…そうではないかもしれませんわね」

「総じてどうでもいい奴だったんだよ、きっとさ」

 夏男が青海の肩をポンッと叩く。

「白いジーンズ…ギター…ソレはもしかして、あのような人でしょうか?」

 窓から校庭を見ていた向井が校庭に立っている男を指さす。

「あの男です‼ 冬華ちょっと行ってくるです‼」

 冬華が生徒会室を飛び出した。

「ちっこい先輩、俺も行くぜ」

 青海が後に続く。

「向井君、解っていると思うけど…」

 小太郎が向井に話しかける。

「はい、あの白は撃ち抜かない方向ですね」

「うん…反射的にとか無い方向でね」


 とりあえず冬華が田中さんに走り寄った。

 手を広げて冬華を抱きしめようとしたっぽい田中さん。

 スルッと田中さんの手をすり抜け後方へ回り込む冬華、「んっ?」となる田中さんの背中に回し蹴りを叩き込む冬華。

 前に、つんのめる田中さん。

 数歩遅れた青海が田中さんの顔面に前蹴りを決めた。

「会長…僕が撃ち抜かなくても…」

「うん…何があったかは解らないけど…何が起きているかは理解しているつもりだよ」

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