第48話 すぃん・めもり~
「いや~背中打ったから、息が止まったよ~数秒」
きっかり10分、夏男が戻ってきた。
「ソレで済むんだな…アンタ…世が世ならホントに凄ぇ人なのかもしれねぇな」
青海が呆れ顔で夏男に話しかける。
「毎日、牛乳飲んでるからかな? なんか丈夫になってる気がするんだ俺」
明るい笑顔で答える夏男。
「骨だけの問題じゃないですよねソレ」
青海以上の呆れ顔で夏男を見ている小太郎。
「折ってダメなら冬華が砕いてみせるです‼」
「いえ…骨が丈夫なのでしたら、いっそ焼いてみたらいいのですわ」
クイッと親指で後方に位置する焼却炉を指さす春奈。
「こんがりウェルダンで頼むぞ夏男よ、ハッハハハ」
「あらっ、先生なら、そんな面倒なことをしなくても、白いペンキでも頭からぶっかけて、彼のレーザーでジュンッ‼でいいわ」
「ジュンッ、なんてそんな…最大出力で貫きますよ」
向井がムキッとポーズを決める。
「威力は調整できるんだ…」
小太郎がボソッと呟き考えた…。
(コントロールできるのであれば、向井は、夏男にどの程度の威力で発射するのだろう?)
一瞬脳裏を過った夏男がアニメのチーズのように穴だらけになった姿。
「これは…僕の願望なのだろうか?」
随分と、この環境に毒されている自分に恐怖を覚える小太郎であった。
その後、ダラダラと時間が過ぎ、小太郎と向井、青海は校庭の隅で立花先生に言われ、バーベキューで余った食材をゾンビに与えていた。
美味いんだか不味いんだか、「あうぁー」と残飯に群がるゾンビ達。
「会長先輩、コイツ達、胃とかあるんかな?」
青海がポリバケツから残飯をテキトーに放り投げながら小太郎に話しかけた。
「胃…胃ねぇ…どうなんだろう? 向井くん、キミ未来で戦ってたんだから知らないの?」
ゾンビ一人一人に手渡すように腐りかけの生肉を配っていた向井に聞く小太郎。
「僕は、骨専門ですから」
「接骨院かオメェわ‼」
「いや青海くん、彼は、くっ付けるほうじゃなくて、粉砕する方だから」
「デストロイヤーじゃねぇか‼」
「そうだよ、彼は破壊紳だよ」
「破壊神……ウチの連中はそんなんばっかだな…」
「……うん…残念ながらね」
秋季、春奈、冬華、桔梗、青海…そして向井。
残念ながら建設的な人間は独りもいない。
その他は自分と…アレである。
生徒会室の窓から自分たちを楽しそうに眺めている夏男の笑顔。
無性に腹が立つ。
「はっ?!」
思わず声をあげた小太郎
「なんだ? 会長先輩? どした?」
「思いだした…」
「なにを?」
「うん…誰だっけ…名前が出てこない…」
「あっ?」
「顔はでてるんだ、けど…名前が…」
「そういうことあるよな、どうでもいいヤツなんだよ、気にすんな」
小太郎の脳裏に過った顔。
(あの人、どうしてるんだろう?)
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