第47話 ふ~る・ぼ~い
「いや~死ぬかと思ったね実際」
顔だけ不自然日焼けした夏男が生徒会室で麦茶を飲んで寛いでいる。
「そりゃぁ、アンタ、砂に埋まっていたせいだぜ」
「顔だけは小麦色だけどな」
「まぁ、不快感に磨きをかけましたのね…私に対する挑戦と受け取ってよろしいのかしら?」
「まだ暴れ足りねぇのか…
「冬華が先です‼ 冬華、コレを手に入れたので使ってみたいのです‼」
「おいおい…
「察しの通り、軍隊仕様です‼ 狙いをつけてズバンッです‼」
「おいおい、俺を取り合うなよ~なんか照れるってばさ~」
「取り合うの意味が違うんですけどね夏男さん」
「うむ、命を取り合うってことだからな夏男よ」
「それでもさ~なんか前向きに捉えれば、幸せな気持ちになれるよ俺」
「凄ぇぜ…アンタ、ポジティブを超えてクレイジーだな」
「美女に命を狙われてるなんて憧れない?」
「まぁ、ホントに性根から気持ち悪いんですのね、可愛そうとは思いませんけど」
「冬華はなんでもいいです、もうゾンビは撃ち飽きたのです‼」
スチャッとナイフを構える冬華、もちろん切っ先は夏男の眉間を捉えている。
「受け止めるよ、ソレがどんな形であれ…冬華きゅん♡」
目を閉じて両手を広げ唇を突き出す夏男。
「とりあえず向井くん、消し炭にしておいてくれる? 先生、あの顔とても不愉快だから」
「わかりました」
「わかるんじゃねぇよ‼ 俺はな~女は好きだが、男は嫌いだ‼ 世界中の男がゾンビになって女だけ生きてりゃいいんだ‼ もちろん俺以外のな‼」
「うわぁ…バカの夢をキレながら語った…ホントに気持ち悪いですよ夏男さん」
「うむ…19歳で真剣に口にすることは、なかなかできないぞ夏男…逆に天晴‼」
「冬華ちゃん、そのナイフ貸してくださらない…今なら外す気しませんの」
「嫌です‼ 今、あのモンスターは冬華に挑んできたのです‼ 冬華がやらなければならないのです‼」
「さぁ‼ さぁ‼」
ジリジリと椅子を立って冬華に近づく夏男。
「こうです‼」
冬華が夏男の背後に回り、思い切り背中を蹴った。
「ん? なにこの浮遊感?」
ドンッ‼
窓から下へ落ちた夏男。
「3階から…行きましたね…」
「うむ…行ったが…逝ったかどうか?」
夏男が生徒会室に顔を出したときに皆思ったのだ。
夏男が、あの状況でなぜ生きていたのか?
皆、一瞬は考えたのだが…誰も聞こうとしなかった。
だって…
誰も窓から下を確認しなかった。
だって落ちたのは
10分もすれば戻ってくるだろうから。
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