第40話 きゃんさ~&ろぶすた~

「見つけたぞー‼ この恨み…この仕打ち…許すまじ‼」

 海藻を纏ったメガネが猛ダッシュでコチラに向かってきた。

「オキュベキカー‼」

「なんか奇怪な言語を叫んでいるわよアレ」

「何を言ってるかなんて関係ありませんわ、眼鏡を掛けて向かってきた以上、成敗するしかありませんのよ」

「うむ‼ 盗撮ダメ絶対ということだな…やるしかあるまい‼」

「コレ撮れたです」

 いつの間にか戻ってきた冬華が猛ダッシュしてくる夏男にナマコとアメフラシを投げつけた。

 ステーン‼

 当然のように踏んで漫画のように転ぶ夏男。

「外さない男だな、夏男はハッハハハー」

「ちっこい先輩…カニが…暴走気味なんすけど…」

 なんか気持ち悪いレベルで成長が促進されたようなカニが青海に襲い掛かっている。

「なんかエビも混ざっているような…異様にデカい…」

「まぁ、丁度よい不気味さですわ」

「なんか、ここらの甲殻類は無駄にデカいぜ‼」

 一同、一瞬黙って足元でハサミを動かして威嚇してくる甲殻類を見て誰もが考えた。

(ゾンビの肉食ってデカくなったんじゃないか…)

 俄然、食欲が失せてきた一同の中で唯一、気にしないタイプの冬華だけが、さしみ醤を準備し、足元にいたロブスタークラスのエビをムンズッと掴んでバキッと割って食べだした。

「えぇ~…」

 一同がドン引く中、無言でモグモグとエビを食べている冬華。

「何してるです? 早くバーベキューするです」

「まぁ…牛は草食ですから…問題ありませんわ…」

「おっ…おうよ…」

 青海がパックの牛肉を焼きだした。

「ハッハッハー、俺はこんなに食欲の湧かないバーベキューは初めてだぞ」

「そうね…なんか先生、足元のカニが怖くなってきたわよ」

「カニ? 焼くですか?」

 冬華がヒョイッとカニを持ち上げ、網にドンッと乗せてトングで抑えつけている。

「もう…ホラー映画だよ…コレ」

 小太郎が冬華に怯えだす。

「向井‼ 火が弱いです‼ もっとジューッとなるくらいに火力をあげるです‼」

 冬華は必死で暴れるカニを抑えつけている。

「瞬殺するくらいに火力をあげるのです‼」

「はい‼」

「炭より焼けた肌はなんのためですか‼ 見せかけの筋肉などいらんのです‼」

「見せかけの筋肉とは…へのツッパリはいらんですよ‼」

 向井がムキッと筋肉をアピールする。

「…へのツッパリ? 俺のことかー‼ 勝負すっかコラッ‼」

「この子…本当に未来から来たの? 先生疑っちゃうわよ…」


 一同がバーベキューに興じる砂浜で海藻がユラリと立ち上がった。

「オキュベキカー‼」

「うわっ‼ びっくりした…」

 小太郎がビクッとなり後ろを振り返る。

「忘れてましたわ」

「うむ…忘れてた」

「何を忘れたですか?」

「夏男のことを…忘れていた…ハッハハハー」

 秋季が扇子をパンッと開き高笑いした。

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