第38話 だーてぃ・うぉ~たー
ドボンッ……。
とりあえずプールに夏男を放り込んだ青海と向井。
廊下の面々は窓を全開にしてシンナー臭をどうにかしようと試みていた。
窓の下では、プールが見える。
「汚いわね…プール」
「そうですね…掃除なんてしてませんから…」
「よいよい‼ 夏男が元気になったら、汚れたついでに掃除を頼めばよい‼ ハハハ」
「名案ですわ‼」
「冬華、プールで泳ぎたいです‼」
「夏らしいですね~」
シンナー臭が漂う廊下で窓の下での様子を眺める無責任な面々。
「どーう? 掃除させらそうかしらー‼」
大きな声で下にいる青海と向井に夏男の様子を尋ねた立花先生。
無言で向井くんが両手でバツを出している。
「まぁ? ダメなようですわ」
「そうすると…プール案はボツだな…」
「じゃあ、海に行きましょう」
「名案ですわ‼」
「うむ、ではデパートで買い物だな‼ ハハハハッ、腕が鳴るなー‼」
「なんで買い物で腕が鳴るんですか?」
「冬華、河童が見たいです‼」
「河童は淡水だから、海は半魚人か人魚よ」
「どれもいませんよ…先生」
「人魚…半魚人…河童…どう違いますの?」
「うむ‼ まず半魚人だが、上半身が魚だ、そして人魚は下半身が魚だ‼」
「秋季さん河童はどうなるんです?」
「うむ……魚と人が絶妙な比率で混ざると河童だ」
「冬華は河童がいいです‼」
「そうね、大体そうね‼」
「適当なことを…」
「あらっ、そうすると一番、いそうなのは河童ですわね」
「そうなんですか?春奈さん的には」
「もちろんですわ、だって、そんな半身が魚とか無理がありますもの」
「切ってくっつけたんじゃないですか、瞬間接着剤で…あの人みたいに」
小太郎の呆れた口調、怠そうにプールを指を差し頬杖をつく。
「半身が魚……冬華…なんだか半魚人作れる気がしてきたです‼」
「ハハハッ、その意気だ冬華くん‼ 明日デパートで接着剤と大きな解体包丁を買おう‼」
「うずうず、するです‼」
「青海君、チョコボール、もういいから帰ってきなさい、明日はデパートで海水浴の準備よー‼」
立花先生が下の2人呼んで、シンナー臭の残る生徒会室で海水浴のスケジュールを立てて、空がオレンジに染まる頃、皆で帰宅した。
家に帰った小太郎。
「あぁ、明日から何日か空けるから、海水浴行くんだ」
「あぅあー」
ゾンビ両親に報告して、お風呂に入って早めに眠った。
「あぁ、海か~楽しみだな~」
皆、なんの疑問を抱かずに就寝したころ…
「アォーン‼」
学校のプールからヌラッと顔を出した生き物の遠吠え。
コケと葉っぱに塗れた怪物は満点の星空に向かって幾度も吠え続けた。
「この仕打ち…この恨み…晴らさでおきゅべきかー‼」
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