第35話 ま~ぶる
「おっはよー」
「はっ…早いですね…二階堂さん」
小太郎より早く、夏男は生徒会室にいた。
鼻に丸めたティッシュが突っ込まれている夏男が。
「会長さまより、早く来るのは当然ですよ~」
いやに絡んでくる物言いで夏男が小太郎に近づいてくる。
「ちょっ…近い…ウザイ‼」
顔を近づけてくる夏男の脛をつま先でガンッと蹴る小太郎。
「イタッ‼ 貴様ー‼ かの豪傑、弁慶すら泣いたとされる人体最大の痛点をピンポイントで軽々しく蹴るな‼」
「朝から元気ね~血圧高いんじゃない?」
「先生…その恰好は?」
夏男が胸ポケットからメガネを取り出した。
「いやね…ほらっ、白衣だとイキナリ狙撃されかねないじゃない、先生、チョコボールの安全が確認されるまではコレでいくわ」
真っ赤な薄手のコートを羽織った立花 桔梗(保険医)
「だからね、毎朝飲んでる牛乳も、今日からコレよ、コレ‼」
「イチゴ牛乳ですか…」
「今朝はね、レモン牛乳のときは黄色い服で来るわ」
「そうですか…まぁいいんですけど…アレが」
小太郎が指さした先、夏男がハァハァ言いながら立花先生を凝視している。
「下着も赤だったりするんですね‼ 先生‼」
「小太郎君…白いペンキあるかしら?」
「はい?」
「いや…あのバカをビームで狙撃させようかと思ってね、先生、殺意しか湧かないわ、あの生き物に対してわ」
「スプレーで良ければあるぜ」
いつの間にか登校していた青海が立花先生に白のスプレー缶を渡す。
「用意がいいわね」
ブシュー‼
人体の急所を中心にスプレーで夏男を染め上げる立花先生。
「青海くん、キミ、スプレーを持ち歩いているの?」
「会長先輩、スプレーは不良の必須アイテムだぜ‼」
「楽しそうです‼ 冬華もやるです、青海‼ スプレー出すです‼」
「おっ…おぅ‼」
特攻服からスプレー缶を取り出し冬華に投げて渡す。
カラカラカラ‼ ブシュー‼
「あー‼ 冬華ちゃん、ソレ黒だからダメよ‼」
「色なんか関係なです‼ 冬華、アレにブシューとしたいだけです‼ それだけです‼」
「やめてくれ…なんでこの世界は、俺にだけ、こんなに厳しいんだ…」
もはや横たわり動こうともしない夏男に空になるまでスプレーを吹き付けた2名、空になったスプレー缶をカンッと夏男に投げつけた。
「おはようごじざい…臭い‼」
春奈が登校するころ、生徒会室はシンナー臭で満ちていた。
「困ったわ…今日は、この部屋を使えないじゃない」
「まぁ、ソレは赤い服着た誰かのせいですわ」
「冬華クラクラするです…」
「とりあえず体育館で涼みましょうか」
皆が体育館でアイスを食べていた頃、遅れて登校してきた秋季が、部屋で横たわる謎の生物を前に悩んでいた。
「うむ…ん?牛? 天晴‼」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます