第34話 りた~ん
「いや~、くっつくもんだね」
小指をジョキンッ♪と切り落とされた夏男がケロッとした顔で生徒会室に帰ってきた。
黒い包帯?で巻かれた小指をピンッと突き立てて見せる。
「その顔がムカつきますわ…コレが殺意ってヤツですのね」
「心配ないです、また切ればいいのです」
冬華はやる気満々である。
「何度でも切るがいい‼ その度に我が指は復活するであろう‼ このアロンβとゴリラテープがある限り‼」
(あの黒いの包帯じゃないんだ…ビニールテープなんだ…)
小太郎は夏男に恐怖した、そのデタラメな身体の構造に。
「なんだ? 指って瞬間接着剤でイケるもんなのか?」
青海が夏男の小指をピンッと弾く。
「痛ぇんだよ‼ この
「うむ…特にゼリー状はな‼ ハッハハハ」
「ゼリー状…コレですか? くっつかないですか?」
冬華は夏男の靴をアロンβゼリー状で固めようと足元でしゃがんでいた。
「うむ…瞬間イコール一瞬ではないということの証明だな」
「まぁ…相対性理論に繋がるインテリジェンスな会話ですわ」
「そうなのか? 副長先輩、相対性理論ってなんなんだ?」
「まぁ、青海くんは相対性理論も知りませんでしたの?」
「三宮寺さん、アナタ説明できるの?」
立花先生が意地の悪い言い方で春奈を煽る。
「もちろんですわ‼ 好きな人の隣にいると時間の流れは早く、嫌いな人の隣にいると長く感じるという不思議を証明したのが相対性理論ですわ」
自信満々に答える春奈。
「解ったような…解らないような…」
小太郎が首を傾げるが、誰も反論できなかったので、ひとまずソレで良しとなりました。
アイスティを飲み、クッキーに飽きてきたころ、立花先生がスクッと立ち上がった。
「そうじゃないわ‼ チョコボール向井くんの話だったじゃない‼」
「はっ?‼」
当の本人『チョコボール向井』も忘れていた本筋に戻ろうとしたのだが…下校時間を告げるチャイムが校舎に響いた。
「うむ…どうだろう小太郎会長、続きは明日ということで」
「はい…本日は解散します」
「おつかれーしょ~ん」
立ち上がった二階堂 夏男が一歩踏み出そうとした瞬間、景気よく顔面から転んだ。
瞬間接着剤アロンβゼリー状が夏男の足元で靴と床をこれでもかというくらいに固着していた。
顔面強打で鼻血を垂らす夏男のことなで視界に入らないかのように皆、帰宅した。
最後に部屋を出た小太郎が電気を消すとき、未だ立ち上がらない夏男いに一声かけた。
「電気消しますよ」
「……うっ…うわぁぁぁー‼」
オレンジに染まる生徒会室で夏男は声を出して泣いた
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