第32話 ちょこぼ~る
「先生、夏男くんの指なんてどうでもいいんだけど…AIの話はどうなったのかしら? 飽きてきたわよ、いいかげん」
この上なく無駄な時間を過ごすことにかけては誰にも負けない面々、そんな彼らでも飽きてきちゃう夏男という存在。
こと立花先生にしてみれば卒業済みの生徒の指がコロッと捥げても気にならないのだ。
「冬華が、今新しい話題に切り替えるです‼」
ジャキジャキとハサミの刃を鳴らして夏男の小指にジトーッと照準を合わせる冬華。
「早めに頼みますわ…糸でも指でも切り落としてください」
紅茶を淹れる準備に取り掛かる春奈、アフタヌーンティーは夏男の小指を眺めながら過ごす気なのだろうか?
春奈を震源地とした、猟奇的な空気が支配する生徒会室…
校内にゾンビが右往左往していても、こんな空気にならないのに…夏男と春奈が接触すると、空気が凍り付く不思議。
尻の穴まで凍り付くような感覚に襲われる小太郎なのである。
(もはや超常現象…)
ゾンビが働く現在を生きる能力者に不思議を語る資格はないとも思うが…。
「それはそうと…AIの話に戻りましょう」
「なんとー‼ 俺の小指は、ソレはそうとじゃ済まんでしょうがー‼」
「待つです‼ 逃げると切り落としにくいです‼」
「逃げるでしょうがー‼ シザーを鳴らしながら追いかけてくる人から追われたら逃げるでしょうがー‼」
冬華がハサミをジャキジャキ鳴らしながら夏男を追い回し、小指を隠しながら逃げる夏男、そんなリアル、トムとジェリーのドタバタを他所に、いつものように逸れていった会話を立て直す小太郎。
さすが生徒会長である。
「うむ…小太郎会長の言う事も、夏男に飽きてきたのも至極もっともな話だ」
秋季はすでにアフタヌーンティーの用であろうクッキーを摘まんでいる。
「扇子の先輩、AIって…なんだ?」
青海が真顔で秋季に尋ねた。
「うむ…知らねば教えよう……『あったら、いいね』の略で、賢い脳みそを作った人がいてだな…それが、未来で大暴走みたいな感じで、そこのチョコボールがやってきたわけだ」
「奇跡的に本筋はあってます…がAIとはArtificial Intelligenceの略ですが…」
「うむ‼ ソレがあったらいいねという脳みそなわけだ‼」
「よく解らねぇけど…コイツが…チョコボールってなんだ? 扇子の先輩」
クイッと親指で向井を指す青海。
「うむ‼ それはだな、昭和と呼ばれた時代に存在した伝説の男、日焼けした筋肉ダルマで苗字が向井であれば、間違いない‼ チョコボール向井の子孫に相違あるまい‼ ハッハハハハ」
「マジか…」
秋季の言葉に追われていることを忘れ立ち止まった夏男。
ジャキン‼
その瞬間…夏男の小指がポトンッと床に落ちた。
「やってやったです‼」
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