第31話 え~あい
「向井くん、キミは未来から来たって言うけど…その…こんな世界でタイムマシンなんて存在するの?」
未だに筋肉ダルマこと向井が未来から来たという話を飲み込めていない小太郎。
「はい、皆さんは、未だにゾンビだらけの世界でインフラが整っているのは何でだと思っているんです?」
「そりゃゾンビが今まで通りに働いているからでしょ?」
「それもあるんですが、大半の設備はAIが機能していたからなんです」
「AI…先生、久しぶりに聞いたわ~」
「さて…AI…何の略だったかしら? アンチ・エロメガネ?」
「Eでしょうが‼ EROだもんEでしょうが‼」
夏男が春奈に食って掛かる。
「あらっ 私はEでもIでも夏男さんのアンチですわ…産まれつき‼」
言い方はおっとりしてるが春奈の目はギロッと夏男を睨んでいた。
「生まれた瞬間から意識されていたと思えば…赤い糸が見える‼」
夏男が気持ち悪く笑みを浮かべる。
(この人は、なんて強メンタルなんだ…ある意味では見習うべきなのかもしれない)
小太郎は、自分なら心が木っ端ミジンコになりそうな言葉を受け止め咀嚼し都合よく解釈できる夏男を冷めた視線で見ていた。
見習うべき…と思いつつ、羨望ではなく冷めた視線になるのは生理的に受け付けないからである。
「ここから、こう~繋がっているんですよ~春奈くん…フフフッ」
小指を突き立てニタニタと笑い、春奈の小指に視線を這わす夏男。
「ここに糸があるですか?」
冬華が夏男と春奈の中間にチョコンッと突っ立つ。
「ふ…冬華ちゃんとも? 俺もうどうしたらいいんだー‼」
夏男が歓喜の叫びをあげ悶絶している。
しばし、夏男をジトーッと見ていた冬華。
「別にどうもしなくてもいいです どうにかしたければこうすればいいです」
バッグから大きなハサミを取り出して夏男がおっ立てている小指にソッと充てる。
「いくです…せーの‼」
バツンッ‼
即座に刃の間から指を抜いた夏男、
「あっ…アブねぇ…」
「チッ‼」
春奈が大きく舌打ちをした。
「なぜ抜くです?」
意外そうな顔で夏男を問い詰める冬華。
「抜くでしょうが‼ タコじゃねぇんだから‼ 生えてこないでしょうが‼ マイ小指‼」
「ん?タコ? タコは切ってもはえるですか?」
「ハハハッ、聞いたことはあるな、タコの足は千切れても生えるらしいぞ 冬華くん」
秋季が朧げな知識を偉そうに語る。
「無限タコ焼き…です…」
シャキシャキとハサミを鳴らして考え込む冬華。
成り行きを静観していた青海
(あのハサミ、きっとタコの足を切るようだな…怖ぇぜ…チッコイ先輩)
タコの足の切る感覚で人の小指を切ろうとする冬華に恐怖を覚える青海であった。
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