第29話 ほわいとぼ~ど

(夢じゃなかった…)

 翌朝、数%の可能性に掛けていた小太郎、残念ながら昨日の事は夢ではなかった。

「おはようございます ミラクル地球人 小太郎さん」

 タコの足をムシャムシャと食っている筋肉ダルマが元気よく挨拶してきたのだ。

「あの…アナタは?」

「私の名前ですか?」

「えぇ…まぁ…いや、それもそうなんですが…」

「言えません」

「そうなの?」

「はい、未来が変わる可能性があるので…勘弁してください」

「あの…未来を変えるために来たんでは?」

「いや変えたい未来はハイパースケルトンだけで、ソレがいは意外と平和というか」

「そんな都合よく変わるもんなの?」

「不可能を可能にする、ソレがミラクル地球人 小太郎さんです」

「キミもミラクル地球人なんだよね?」

「はい…ですが私には…そんな能力はなかったようです」

 ガクンッと肩の力が抜けた筋肉ダルマ。

 タコだけはクチャクチャと食べ続けているあたりが小太郎をイラッとさせる。

「小太郎さん…お願いがあります」

「なに?」

「醤油を頂けないでしょうか?」

「なに?」

「いや…生のタコには調味料が欲しいのです」

「キミ…マジで帰れ」


「まぁまぁ、そう邪険に扱うモノではないぞ小太郎会長、いやミラクル地球人」

「もういいんだよ‼ そのミラクル聞くだけでイラッとすんだよ‼」

「まぁ、やはりミネラルのほうが?」

「そういうことじゃねぇんですよ‼」

「怒りっぽいのはカルシウムが不足しているからよ小太郎くん」

「小魚アーモンドがいいぜ、会長先輩」

「冬華、牛乳飲むです、背が伸びるのです」

「冬華ちゃんは、飲んでる割には背が伸びなかったようだな、アハハハ」


 ゾロゾロといつもの面々が登校してくる生徒会室。

「さて、昨日は飽きて帰ったわけだが、今日は本題へ踏み込むつもりだ」

 秋季がホワイトボードの前に立つ。

「まぁ、なんだかソレッぽくなってきましたわ」

「じゃあ、まぁ牛乳しかねぇが、乾杯‼」

 夏男が牛乳瓶を前へ突き出す。

「……会議の前に乾杯ってどうなんでしょう?」

 釣られて牛乳瓶に手を掛けた小太郎が疑問を投げかける。

「いいじゃねぇか、ノリだよこんなの」

 夏男が皆の牛乳瓶をカチンッと鳴らして回る。

「よっ、オマエも…」

 夏男が筋肉ダルマの牛乳瓶で乾杯しようと右手を伸ばした瞬間。

「やめろー‼」

 ビクッとなって牛乳瓶を床に落とした夏男。

 床に転がった牛乳瓶をバチキューンッ‼と光線が貫きパキンッと割れた。

 一同驚愕の展開…

「左手がサイコガンです‼」

 筋肉ダルマの左手がサイコガンに変わっている。

「フル・レッド・タイツ…呪われし左腕…」

 ボソッと呟く筋肉ダルマ。

「はい?」

 春奈がイラッとした顔で聞き返す。

「私の能力です」

(そこはコブラとかじゃないんだ…赤い全身タイツの方なんだ)


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