第28話 ふゅ~ちゃー

「未来ですか?」

 小太郎が筋肉ダルマをマジマジと見つめる。

「今から20年後…この世界はスケルトンに支配されてしまいます」

「ゾンビじゃなくて?」

「スケルトンです…とんでない骨密度を誇るハイパースケルトン…」

「はいぱー?」

「強い…強すぎるんです‼ 奴らは‼」

「……話が飲み込めない…」

 小太郎が遠い目で空を見上げた。

 太陽が照り付ける暑い日であった。

 ゾンビの皮膚がよく乾きそうな乾燥した暑さだ。

「ほぉ~、ハイパースケルトンね~聞き捨て御免なパワーワードだな~」

 夏男がヌロッと話に入ってきた。

「アイツが…あの男が産み出したスケルトンに支配された世界を変えるために、俺は未来からやってきました」

「うん…さすがに信じられないわよ先生」

「冬華、信じるです‼ ターミネーターです‼」

「まぁ、ターミネーターですの? このミートボール」

 春奈が筋肉ダルマを指さす。

「ということは…キミは機械で出来ているとでも?」

「あるいは液体金属かもしれねぇぜ」

「確認のために…と‼」

 立花先生が筋肉ダルマの剥き出しの尻にブスッとコンパスを突き刺す。

「痛ぇよ‼ 俺は人間だ‼ 未来から来たミラクル地球人だ‼」

(あ~、そのワード聞きたくない)

 自ら耳を削ぎ落したゴッホの気持ちが理解できた気がした小太郎、不思議と涙が溢れてくる。

「ミラクル地球人…小太郎さん…未来を救ってください…もう…時間が…」

 筋肉ダルマがガクッと跪く。

「消えるの?」

 椅子に座って寛いでいた立花先生が立ち上がる。

「うむ、お約束というやつだな」

「オマエの願い、受け取ったぜ」

 夏男がサムズアップでニカツと笑う。

「いや…アンタには頼んでねぇと思うぜ」

「小太郎は、やるです‼ 安心して消えるです‼」

「いや…何をしたものか?」

 小太郎、ガチで『?』である。


「………消えないな…」

 秋季が扇子の先で倒れた筋肉ダルマをツンッと突く。

「やだ…目の前で超常現象を見れると思ったのに、先生、帰ろうかな?」

「まぁ…とりあえず今日は解散ということでいいんじゃなくて?」

「そうしよう‼ 俺は腹が減った」

 夏男が春奈に同意する。

「コレ食べるといいです」

 冬香が倒れた筋肉ダルマの後頭部に新鮮さが失われつつあるタコをポチョンッと置いた。

「チッコイ先輩…常にタコ持ち歩くんスか?」

「冬香、いつでもタコ焼きを焼く用意はしてるです、転ばぬ先の杖です‼」


 なんかガヤガヤと生徒会室を出ていく面々。

 気絶している筋肉ダルマと残された小太郎。

(どうしろというのか…)


 ウネウネと動くタコを見つめて小太郎は少し泣いて、小太郎は黙って生徒会室を出ていった。

(全部、夢ならいいのに…)

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