第27話 みーとぼ~る

 日焼けした褐色のBODY

 素っ裸で地面にめり込んで倒れている男。

「この、めり込み方…確かに空から降ってきたのかもしれねぇぜ」

「まぁ、丈夫な身体ですわね~」

「丈夫のレベルを超えているわよ」

「ハハハッ頑丈な身体ということだな」

「……女なら良かったのに…男の裸なんざ見たくもねぇ‼」

「冬華、ロクな予感がしないです‼」

「うむ、では…埋めるか?」

「賛成です‼」

「賛成‼ じゃないでしょ‼ 助けましょうよ‼」

「しかしだな小太郎会長殿…俺も嫌な予感しかしねぇぞコレ」

 夏男が筋肉ダルマを指さす。

 ゴキッ…

「ん? あぎゃー‼」

 夏尾の人差し指を躊躇いなく、へし折ったのは…気が付いた筋肉ダルマであった。

 ヌラッと立ち上がった筋肉ダルマ。

「あらっ? 意外と小柄ですわ」

「ちっさいけど、厚みがあるわね…なんか不気味」

「冬華と同じくらいです‼」

 隣に並んだ冬華が筋肉ダルマと背を比べている。

「お前等…俺の心配は?」

 夏男が折られた指を押さえながら、うずくまっている。

「それはさておき…キミは誰だ?」

 秋季が扇子でちっこい筋肉ダルマを指す。

「さておかないでくれ…」

「……小太郎さん?」

 秋季など目に入らないような表情で小太郎に視線を移す筋肉ダルマ。

 とりあえず、『テープマジック』で夏男の指にカットバンを貼る立花先生。

「コレでよし」

「…まさか…骨折を絆創膏で? 絆創膏でかー‼」

 夏男の叫びなんざ誰の耳にも届かない世界である。

「なんで、この世界は俺にだけ、これほどまでに厳しんだー‼」

 誰も気にしてない、そういう世界なのだ。


「僕をご存じで?」

 小太郎が少しの間をおいて筋肉ダルマの顔を覗き込む。

「もちろんです、ミラクル地球人 小太郎さん」

(またソレか…)

「時に小太郎さんは自分の意思でミラクル地球人になれますか?」

「自分の意思で…いや…絶対になりたくないんだけど」

「えっ?」

「なれないし…なりたくないし…なんなら忘れたい」

「まさか…だとしたら、俺は…俺はー‼」

 膝から崩れ落ちて筋肉ダルマが地面に拳を叩きつけた。

 ズドーンッ‼


「揺れた…揺れたわよ」

「コイツは只者じゃねぇぜ…俺には解る」

「あらっ、皆解ってますわよ~裸で空から降ってきた時点でアブノーマルだな~って」

「なんか冬華…この生き物気持ち悪いです…アレと同じくらい」

 冬華が夏男を指さす。

「なんとー‼ 骨折の次はメンタルダメージ‼ もう立っていられない…俺、旅に出たい…」

「うむっ、行くがいい‼ 誰一人として貴様の旅路を止める者はいないであろう‼ ハハハハッ」

「小太郎さん‼」

 筋肉ダルマにガシッと肩を掴まれた小太郎。

「なんでしょうか?」

「未来を…未来を変えてください‼」

「はい?」


「スケールの大きいことを言いだしたわよ~、このミートボール」

 立花先生が筋肉ダルマの額に手を当てた。

「でも…熱はないみたい」


(正気で、この破壊力なんだ…)

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