第23話 ぴ~すふるわーるど

「平和な日常に飽きたのさ」

 キャンプファイヤーの炎を遠い目で見ながら夏男は呟いた。

「ゾンビものは、こうでなきゃな‼」

 血の気の多い青海、満足の宴である。

「冬華…熱い…」

 キャンプファイヤーの火の熱にやられた冬華。

「思ったんだ…あの妙に動きの粗いゾンビを見てさ、なんか骨だけにしたら、メッチャ動くんじゃねぇかって…さ」

 肉とかなんか、引っかかったり、ぶら下げたりして動きにくそうなゾンビに対しスケルトンは身軽である。

 ゾンビ時代から動きがいい荒くれゾンビ、スケルトン化したら3倍早い?

 夏男の推測通り、今宵、妙に動きのいいスケルトンブラックが今夜誕生したのだ。


「なんかアレだな、生前の能力差は死んでも引き継がれるんだな」

 青海、妙に納得している。

 それほどスケルトンブラックの動きが際立ってよいのだ。

 立花先生がギャーギャー騒ぎ(騒いでいるだけ)、秋季の『ゴッド・イーター』は相変わらずアンデッドに無効、春奈に至っては早々に戦線から外れて声援に回っている。

 頼るは小太郎が用意していた野球部の部室から拝借してきた金属バットだけである。

 怒りに任せてフルスイングする小太郎、始まって以来、初の頼れる男の背中を醸し出していた。

「うむっ、私のゴッド・イーターに勝るとも劣らない神器を手に入れたようだな天晴‼」

「効果のほどを問わなければ、その評価でいいですわ」

「会長くん、死ぬ気で粉砕するのよー‼」

 声援に応えるわけでもなく無言で淡々とスケルトンブラックを粉砕していく小太郎。

「うぬぬ…予想外の戦力…」

 キャンファイヤーの向こう側で、思わぬ無双っぷりを発揮している小太郎に苛立つ夏男。

「青海‼ どんどん火中に導け‼ こうなりゃ数で勝負だ‼」

「そうです、いずれ奴はバテるのです‼」

 冬華、すでに小太郎を奴呼ばわりである。

「おうよ‼」

 赤く光る誘導棒を上手に使いヘルメットを被った誘導員姿が妙に似合う青海が額の汗を拭って応える。

「汗して働く姿は尊いものだ」

 働かない男、夏男、青海の働きぶりに満足そうである。

「オマエの汗は、なんかキモいです」

 火の前にいるだけで汗している夏男、キャンプファイヤーに照らされ顔が気持ち悪くヌメテラっていた。

「キモくて結構‼ 俺に対する数々の無礼‼ 奴に一泡吹かせてやれば、俺は満足だー‼」

 完全に小太郎を的に絞ってきた夏男、逆恨み満開である。

「よく解らないです けど冬華は…冬華は面白そうな側に着くのです‼」

「フハハハッ、ダークサイドへようこそ‼ こんな時代を面白可笑しく生きていく世界に乾杯‼」


 すでに『あった~い』に変わった強炭酸水を喉に流し込む夏男。

「フハハハ‼ 冷えてなければマズイ‼」

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