第22話 ねくろまんさ~
(帰るタイミングを逃してしまった…)
ズレた間の悪さも、小太郎のタイミングというものである。
気づけば月明かりが校庭を照らし、グラウンドのど真ん中でキャンプファイヤーがゴウゴウと燃え盛ったていた。
「近づけない程の熱さですわね」
「そうだな、もはや暑さではなく熱さだな、いやはや」
「快気祝というか…雰囲気が儀式っぽくない?」
自ら所望した快気祝いではあるが、コレじゃない感をあからさまに顔に出す立花先生。
もとより感情が顔にでるタイプなのである。
しかしというか確かに、キャンプファイヤーというよりは、生贄の祭壇というほうがしっくりくる造りではある。
(まさか…またなんか企んでいるのか)
「どうしたんだい? 小太郎くん…フフフ」
気配を消して近づいていた夏男、その顔をゆっくりと夏男の方に向けると、ニタ~ッと笑う夏男、炎に照らされて不気味さが4割ほど増した笑顔であった。
「小太郎くん…そのまさかだよ」
(だから僕の心読むなー‼)
皆、自分の心を読む能力を会得したのかと疑いたくなる瞬間であった。
仮に、皆がその能力を有したとしても、夏男だけには読まれたくないと思う小太郎の願いは届くのか?
なんか涙が出てきた小太郎。
「用意せぇいーー‼」
突如、夏男が叫び、冬華と青海が夏男にカラスの羽で作ったようなマントと冠を被せた。
夏男の手には、何か秘めていそうな杖が握られている。
「今、再び乱世じゃー‼」
夏男の後方でキャンプファイヤーの炎が火柱をあげる。
青海が演出を盛り上げているらしい。
「今度は何で買収されたんだ…あの1年坊主は…」
苦々しい思いで夏男を睨む小太郎から漏れた言葉。
「冬華、屋台を造ってもらうのです‼」
小太郎にクレヨンで描いた屋台の雑なイメージ図を見せてくる冬華。
「俺はバイクの改造を頼んだぜ‼」
冬華に負けないクオリティの低い絵を見せる青海。
「今度は3人パーティだー‼ もう負けるもんかー‼」
「なるほど、ドラクエ2ですわ‼」
「そういうことか…納得‼」
「えっ? あたしシドーなの?」
見当違いに状況を把握しだす面々にイラつく小太郎が怒鳴る。
「また、あのスケルトンに襲われるんですよ‼」
「その通り‼」
ボワッ‼と炎の中から飛び出す多数のスケルトン。
「出た‼」
立花先生、思わず退く。
「どうりで、さっきから肉の焼ける匂いがしてたと思った、ハハハッ、コレの匂いかー」
秋季が扇子で顔を仰ぎつつ納得したといった顔で笑う。
「せっかく用意した、お皿が無駄になりましたわ」
高そうな皿を炎の中に放り込む春奈。
「恐れるがいい‼ 今度のスケルトンは、ただの野良ゾンビではない‼ 荒くれゾンビをこんがりと焼いた暴走スケルトンだー‼」
「まぁ、こんがり?」
「どうりで今度のは妙に黒いと思ったわ」
「骨まで火が通っているということか? コレは1本取られたな、小太郎、ハハハッ」
(笑ってる場合じゃねぇよ…)
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