第21話 すれんだ~
「ときに小太郎会長」
生徒会室でパンケーキを食べながら秋季が真面目な顔で小太郎に尋ねた。
「ゾンビも太るのだろうか?」
「あらっ? 斬新な視点ですわ」
「そうね…脂肪をため込むゾンビって、もはや死体じゃない気がするわね」
指に付いた蜂蜜を舐めながら立花先生が窓から校庭でユラユラ動くゾンビを眺める。
「全体的にスレンダーね」
そう、ゾンビに肥満の悩みは無い‼
というか悩むための思考回路が無い。
脳がアレだろうから…ね。
「スレンダーというのでしょうか? あの状態を」
小太郎が校庭のゾンビを指さす。
「ファットではありませんわよ」
「うむ…マッチョでもないぞ」
「消去法でスレンダーでいいじゃない」
少しムッとした顔で小太郎を睨む立花先生。
「いや…別にいいんですけどね」
「そうだぞ小太郎会長、焼けばスケルトンになるのだ、肉など飾りみたいなもんだ」
「そうでしたね…思い出しました、あの夜を」
小太郎の脳裏にキャンプファイヤーからワラワラ出てくるスケルトンの思い出が蘇る。
「甦る?ゾンビだけに?」
ニマッと笑う立花先生。
「勝手に心を読まないでください立花先生」
新たな能力に目覚めたのかもしれない…。
しかし蜂蜜を零してワタワタしている立花先生を見ていると、気のせいだと思えるのである。
(この人に、そんな便利な能力が発現するわけないな)
しばらくボケーッと紅茶を飲んでいると、タクシーがヨタヨタとグラウンドに入ってきた。
停車するまでに2人のゾンビを轢いたことについては、あまり気にならなかったが、タクシーから降りてきた3バカが買い込んできた大荷物は気になった。
(何を買ってきたんだ…というか何をするつもりなんだ?)
青海がゴロゴロと丸太を転がして四角く組み上げていく…
「まさか…」
「ほぉ~、キャンプファイヤーだな」
秋季が梅昆布茶を啜りながら小太郎の横に立った。
「あらっ、何か懐かしく…不思議とイラッとしますわね」
「快気祝いって、あぁいうイメージがないわ」
主賓『立花 桔梗』不満そうである。
3階の面々の視線などミジンコほどにも感じないまま、3バカは手際よく会場設置を進めている。
「なんで、あぁいうときだけ手際がいいんでしょうね?」
「うむ、見事なチームワークといえよう」
「下手に手を出すと邪魔になりそうですわね」
「そもそも先生は、バーベキュー気分じゃないわよ」
(普通に肉を焼くならいいんだ…)
小太郎は不安だったのだ。
鉄板で肉を焼くならいい、あの男はゾンビを焼いてスケルトンを産みだした過去がある。
「帰ろうかな…」
ボソリと呟く小太郎、見上げた空は赤い、赤い夕焼けであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます