第20話 りかばり~
「実際、キツかったわ」
2日後、回復した立花桔梗はしみじみと語った。
いつ壊れるかもしれないボコい櫓の先端にしがみつき、ゾンビに囲まれ、タコを投げつけられた軽い生き地獄を味わったのだ無理もないことである。
人類史上タコを、あれだけ投げつけられた人間がいただろうか?いやいない‼
結局、小太郎に助けられた際にゾンビに数か所噛まれたのだ。
「タコのヌメヌメが緩和したのかもしれないわ」
ゾンビの弱った歯肉、噛む力は、それほど強くはないのだ。
問題はバイ菌やら細菌のほうである。
立花先生、一応、餌付けしているゾンビには定期的に抗生物質を与えている。
まぁ廃棄された食べ物に混ぜて与えているだけではあるが、それでも野良ゾンビに比べたら清潔に保たれている。
今回、夏男が集めたゾンビは大半が野良ゾンビであったのだ。
それでも比較的、軽症で済んだのは冬華のおかげであったのかもしれないタコの滑りが爪やら歯のダメージを和らげた…ケガの功名ってやつだろうが…。
「計算通りデス‼」
「すげぇぜ…ちっこい先輩、飢えたゾンビの群れに飛び込む勇気、噛まれたことまで計算にいれた策略…アンタ諸葛孔明だよ‼」
「うむっ、軍師冬華くんだな、いや天晴‼」
「素晴らしき才能と見上げた勇気でしたわ」
(絶対ウソだ…)
小太郎だけは冬華が、そんな計算できるわけがないと思っている。
なんならゾンビを攻撃していたかも怪しいものだ。
単純に立花先生に面白可笑しく、ぶつけていただけかもしれない。
それが証拠に小太郎が立花先生を引っ張って校舎に走ったとき、大きな舌打ちが聞こえたからだ。
何はともあれ、全員無事であったことを喜ぶことにしよう。
少し大人になった小太郎である。
「で?」
立花先生が小太郎に当然だよねと言った顔で尋ねてきた。
「ん?」
一言で聞き返す小太郎。
「ん?」
オウム返しで聞いてくる立花先生。
しばし無言攻防が続きイライラした立花先生。
「ワタシの快気祝いでしょ‼」
「ハハハハッ、そういうことでしたか、いや斜め上、ハハハッ」
秋季が扇子をパンッと広げて顔を覆う。
「まぁっ、誰からも心配されてないのに快気祝いとか? 見上げた図々しさですわ」
「タコ焼き…焼くですか?」
「快気祝いとか…自分で言い出せるものなんだな…侮れねぇぜ」
「やらいでか‼」
いつの間にか生徒会室に入っていた夏男が叫んだ。
(この人は、数日前にロクでもない祭りを開いたばかりなのに…)
大声を張って生徒会室を飛び出ていく夏男。
「はっ‼ 冬華も準備をしなければです‼」
「そういうことか…祭りに参加しない不良は不良じゃねぇ‼」
カレイド高校が誇る2トップと、卒業生筆頭のバカ。
(行動が反射なんだよな…知性を感じない)
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