第18話 こ~んすーぷ
「当面の問題は……この状況を打破するナニカね」
櫓の上で、ふんぞり返るのは保健医 立花 桔梗その人である。
「ナニカとは? なんですの?」
「それが解れば苦労は無いわ」
「まぁ!? クソみたいな大人ですわね」
「 冬香、ナニカを知ってます‼」
「ホントかおい? チッコイ先輩」
「1年坊主‼ 任せるです‼ 2年生の貫禄を見せつけるときです‼」
「ほほぉ、コレは期待せざるを得ないな」
「ナントカカントカ…パトローナム‼」
冬香が懐から鮮度を失いつつあるタコを取り出しゾンビに投げつける。
「タコ一匹で凌げる状況じゃねぇだろう‼」
ゾンビの頭にポチョンッと乗ったオクトパス…そのグネグネッとした動きにゾンビの視線が注がれる。
注がれるって言っても目玉があるような無いような…。
「おいおい、意外にも興味をひいてやがるぜ、やるじゃねぇかチッコイ先輩」
「冬華を崇め奉るのです‼」
「この隙に櫓を引くのよ、下々の者達‼」
「あらっ立花先生…櫓のてっぺんにいるからって偉いわけではありませんのよ」
「ハハハッ、まったくだ‼ よし行くぞ‼」
言うが早く、秋季が猛烈なダッシュで櫓から離れていく。
「そういうことですわ」
見た目に反して瞬発力の早い生徒達、櫓のてっぺんでポツンッと残された立花 桔梗。
「あのタコが食われた後は…先生か…」
生徒会室の窓から高みの見物を気取っていた小太郎。
「援護射撃です‼」
ただ一人、校舎と逆に走った冬華が生タコをゾンビに投げつける。
「四宝堂さん‼ 投げるなら私の方じゃないのよ‼ 逆方向に投げなさい‼ 集まってきちゃってるじゃないーー‼」
櫓を囲み、ワラワラ、フラフラとゾンビの群れが…。
「遠目に眺めていると祭りのようですわね」
「盆踊りのようだな、ハハハハッ」
「あのボロい櫓が、後、何分持つかだなーオイ」
グシャッ‼
「あっ!?」
青海の言葉を若干食い気味に櫓が傾いた。
「ヘーループー‼」
立花 桔梗 魂の叫びであった。
(必死なんだろうけど…ソレを感じないんだよな~)
とはいえ、小太郎、気乗りしないままノロノロとゾンビのごとく生徒会室を出ていく。
しばらくして戻ってきた小太郎、談笑しながらお茶を愉しむ秋季たちを無視して、運んできた台車に簀巻きになったまま皆と笑っている夏男をドンッと乗せてガラガラと校庭へ運んでいった。
「小太郎ー‼ 冬華もうタコが無いのですー‼」
無言で頷く小太郎。
台車をガラガラとゾンビの群れの中央に押し込んで、立花先生を櫓から降ろし、冬華の手を引いて校舎に無言で戻っていった。
「ん?」
異変に気付き、事態を把握した夏男の叫び声が校庭に響き、小太郎は無言のまま帰路につくのであった。
(今日も無事に終わった…)
部屋で飲んだコーンスープが美味しかったそうです。
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