第17話 かにばりずむ・か~にばる

「食人衝動のまま動くがいいぞー‼」

 小太郎の後ろで簀巻きが大声をあげた。

「うぉーぉー‼」

 届いた声に反応し叫ぶ、いつもの面々。

「なんで、アンタらが反応してんだー‼」

 窓から校庭に向かって叫ぶ小太郎。

「あらっ? ノリの悪い子ね」

「まったく、お祭りですのに…」

「アレだな、小太郎会長は町内にいる祭り反対派みたいなポジなのだな、いやはや…さてもさても…」

「冬華、タコ焼き作るです‼」

「うぉっ‼ ゾンビがタコを食ってやがる‼ 食うなバカ、放せやコラッ‼」

「あぅあー…フゴッ」

 タコの足が口内で張り付き悶えるゾンビ…

「酒池肉林の宴だー‼」

 簀巻きが叫ぶ。

(阿鼻叫喚って、こういうことなのだろうか?)

 校庭は、すでに異世界…カオスが支配する世紀末の様相である。


 本当に一晩で何があったやら……

 昨夜に遡る。


 とりあえず夏男を簀巻きにして解散した面々、あみだくじで見張りに決まった小太郎を残して皆、帰ったわけだが、道中で青海と会った立花先生、聞けば夏男と契約した青海が威勢のいいゾンビの収穫に励んでいたのである。

「おう‼ このバイクのプラモを作ってくれるっていうからよ‼」

 やっすい契約でハードワークに従事していた。

 なんだか知らないが、面白そうだったので、いつもの面々にLineして集合し、一晩で祭りの準備を仕上げたという…。

 秋季が木と段ボールを釘とガムテープで貼った櫓を指さし一言。

「一晩で仕上げた‼ 突貫工事にも程がある…ゆえの、この低クオリティ‼」

(なんで、あの人は、いつもあんなに自信が溢れているんだろう…)

 校庭で高笑いしている秋季の姿に、95%の呆れと5%の憧れを抱く小太郎であった。

「フハハハ、この姿では、その低クオリティを見ることは叶わぬが、これから起こるカオスな時間を待ちきれぬぞー‼」

 簀巻きで横たわる夏男にイラッを感じずにはいられない小太郎。

(こっちには1%の憧れも抱かないんだよな~、アッチとは似て非なる部類なんだろうな~)


「で?」

 青海が秋季に簡潔に尋ねた。

「ん?」

 それを一言で聞き返す秋季。

「まぁ、心なしかゾンビに活気以上のナニカを感じますわ」

 春奈が少しゾンビと距離を取る。

「タコ焼き食わすですか?」

 アツアツのタコ焼きを荒くれたゾンビに口に放り込む冬華。

「はぐぁー‼」

 ゾンビが熱かったのか?は解らないが冬香のタコ焼きがトリガーになったのことは間違いないようで、やる気スイッチがONに変わったゾンビが動くものに襲い掛かる。

「やべぇ…」

 いつもの面々に群がるゾンビ、ゾンビがゾンビを呼ぶ校庭。

「感じる‼ 感じるぞー‼ ゾンビから‼ 震えるぞハート、燃え尽きるほどヒート‼」

(それ…ゾンビから感じちゃダメなヤツだろ…波紋)


 阿鼻叫喚の幕が開く…



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