第16話 は~ど・りぴーた~

 最近の悩みは?

 と聞かれれば、頭痛薬の減りが早いことと答えるであろう…。

「半分が優しさなんて大きなお世話だ…効果を2倍にしてほしい…」

 17歳にしてストレス性の頭痛に悩む生徒会長『佐藤 小太郎』バ〇ァリンのハードリピーターである。

(その原因が、なんで気持ちよく寝ているんだ…というか、簀巻きのままで爆睡してんじゃねぇ‼)

 目の前でイビキをかいて寝ている夏男を、ぶん殴りたくなる衝動を堪えている。

 無神経というか、図太いというか、縛られたまま気持ちよさそうに寝ている夏男、そして縛った方も、すでに就寝中の生徒会室。

 ゾンビも眠る丑三つ時、寝付けぬまま窓から静まった校庭を眺めている小太郎、ポカンと浮かんだ月を見ていると涙が零れた。

(数時間後は何が起こるんだろう?)

 簀巻きのバカが用意した『荒くれゾンビ』とは?

 考えているうちに、答えは向こうからやってきた…夜明け前に。

「あぅあ‼ あぅあ‼」

 ゾンビにしては軽快な声をあげてヌラッと校門から入ってきた神輿を担いだゾンビの集団。

 そのユラユラした神輿の動きが不安を掻き立てる。

「威勢のいいゾンビって初めて見たな~」

 小太郎が遠い目をして呟いた。

「ウリャッ‼ ソリャッ‼」

 威勢のいい掛け声で、その先導をしているのが、特攻服の彼…青海であった。

「ホント…頭痛い…」

 思わず頭抱える小太郎に追い打ちをかける笑い声。

 目を覚ました夏男であった。

「フハハハハ、我と志を同じくする同志‼ 青海が不死の軍勢を率いてきたようだな‼ 目に物を見せてやるわー‼」

(起きた早々からイライラさせるな、この男だきゃあ…)

「起きたんですか? 夏男さん…ずっと寝てりゃいいのに…できれば永遠に」

「バカめ‼ 俺たちに永眠など訪れないのが、まだ解らんか‼ 逝ったらゾンビ化するだけなのだー‼」

「そうですか…早くゾンビになってください、僕が瞬殺しますから‼」

「ゾンビを殺すとか? ゾンビは骨になってもスケルトンとして活動するのだよ‼ 忘れたか、あのキャンプをー‼」

 勝ち誇ったように言い放ち、しばし何かを考える夏男。

「あのキャンプ……あの……うわぁぁぁー」

 突然泣きだした。

(なんなんだ、この不安定な生き物は…)

「お前らが…お前らに…グスッ」

 どうもキャンプでの疎外感を思い出したらしい夏男。

 シクシク泣く、簀巻き夏男を無視した小太郎。

 校庭で、なにやら祭りやぐらを組み始めた青海…と秋季、春奈。

「何をやろうとしているんだ…というか先生まで…」

 一晩で何があったのか、面倒くさい面々が揃っているではないか。

 最後に屋台を引いて現れたチッコイ少女、冬華である。


「冬華を差し置いて祭りとは…屋台の準備です‼」


 思わず無言で頭痛薬を、口に放り込んだ小太郎、追いバファ〇ンである。

(胃薬も必要だ…)

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