第15話 ぱ~てぃ・ないと

 夏男の眼鏡を見て春奈の形相が変わる。

「ずっと覗いてましたの?」

 言い終わる前に春奈が床拭きモップで夏男の顔をグリグリと拭いていた。

「痛い…痛い…そして臭い…痛臭い‼ ゴフッ‼」

 藻掻く夏男など目に入っていないように、無言でモップを夏男の口内にねじ込もうとしている春奈。

 その春奈の顔を見て小太郎は身震いした。

(きっと夜叉ってこんな感じなんだろうな)

「ハハハッ夏男、眼鏡を外してから出てくればよかったのにな」

「グハッ‼」

 ようやく春奈のモップから逃れた夏男、息も絶え絶えに口を開いた。

「貴様ら…この俺に対する態度…猛省するがいい‼」

「反省を超えるんですか?」

「後悔させてやるぞ‼」

「虫の息で這いつくばっている、その姿で言われましても説得力がありませんわよ、ゴミ虫が‼」

「ゴミ虫です‼」

「フハハハ‼ 今夜だけだぞ‼ 明日の朝だ‼ 俺の復讐の夜明けは明日なのだー‼」

「うむ…何を企んでいるか知らぬが、今なら間に合うわけだな」

 秋季が扇子をパンッと畳んで夏男の頭を軽く叩く。

「そういうことですよね、今のうちに拘束してしまえばいいんですよね」

「馬鹿ですわね…」

「何で今日出てきたですか?」

 皆、夏男をバカだバカだと言いながら手際よく縛り上げた。

「バカは貴様らだー‼ 俺が今日ココに来た…いや、昨夜からロッカーに潜んでいたのは、すでに計画は走り出しているからだー‼」

「何の計画か、吐いてもらおうか?」

 完全に縛り上げられた夏男の目が点になる。

「止められるんですよね?」

「喋りなさい、バカな計画を…でないと…ゾンビのエサにしますわよ」

「…………」

「早速、ゾンビをプールに集めるです‼ 飯抜きにするです‼」

「…………俺…食われるの?」

「ハハハッ、そのようだ夏男、残念だが食われてしまうとゾンビにもなれんのでな、1週間くらいでお別れだ‼ ハハハハッ」

 すでにホイッスルを吹きながら校内でウロウロしているゾンビをピッピ、ピッピと空のプールに誘導している。

「行動早いな…冬華」

「小さい分、小回りが利くのかもしれんな、ハハハッ」

「さぁ、どうなさいます?」

「知れたこと‼ 二階堂死すとも自由は死せず‼」

「死ぬという事でよろしいのですわね、では遠慮なく」

「待て‼ 俺の自由は俺だけのものだ…ゆえに応えよう…明日、ゾンビの群れが、ココにやってきます」

「…それだけですの?」

「荒くれゾンビで~す‼ 気の荒いワッショイゾンビだ‼」

「ワッショイ…ゾンビ?ですって?」

「そうだ、祭りになるとヤクザが引くほどに荒くれる輩を用意しましたー‼」

「また迷惑なことを…このひとだけは…」

 小太郎は軽い頭痛に襲われていた。

「問題ない‼ 小太郎会長、全て私に任せるがよいぞ‼」

「よいぞー‼です」


(また厄介な人がテンション爆上がりしちゃってるよ…)


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