第9話 ろっくんろ~る

「人のダメだししているけどよ~、生徒会長様はどうなんでしょうか~?」

 ダメージから回復した夏男が懲りずに小太郎に絡む。

「僕はちゃんと商売人ですよ」

「まぁ、可もなく不可もなくですわ」

 ありきたりのスーツ姿の小太郎。

「違和感がねぇというか…存在感がねぇというか…空気みてぇな野郎だな…なんか同情するぜ」

「同情とかいらないから」

「そうだな小太郎会長、言うなれば…そう‼ THE平均値‼」

 ビシッと扇子の先で小太郎を指す秋季。

「いいじゃないですか‼ 売り場の店員さんですよ、商人ですよ」

「チンドン屋みたいなのを期待したぜ…ガッカリだな…おい」

「つまんないです」

「つまらん男なのだよ、生徒会長様はよー‼」

 ゴッ‼

 小太郎、無言のショートアッパーを夏男に放つ。

 ドサッ…

 同じく無言で倒れる夏男。

「揃ったわね~」

 遅ればせながらというか満を持してというか立花 桔梗がデパートからカッコッとヒールを鳴らして出てきた。

「女神と言えばコレよね~……って」

(うわぁ~キャバ嬢被りだ…)

 無言でけん制しあう春奈と立花先生

「ハハハッ、コレはベテランの嬢と勢いある若い嬢の構図だな‼ なっ小太郎会長」

 空気を読まない秋季が扇子を広げて小太郎に同意を求めてくる。

「黙ってください…頼みますから」

 春奈嬢と桔梗嬢から圧のある視線を向けられた小太郎。

(龍と虎に挟まれた気分だ…一つでも間違えれば…即詰む‼)

 長い沈黙を打ち破ったのは冬華であった。

「で?どこに行くですか?」

(おぉ…ミラクルハンドパワー)

 空気が変わった瞬間、小太郎は冬華に初めて感謝した。

「ん? 地図によるとだな~…顎を摩りながら立ち上がっって頭の悪いテストの裏を眺める夏男。

「ん~……」

 うなりながら歩きだし…

「タクシー‼」

 タクシーを止めた夏男。

 挙げた右手は馬のほうだ。

「あぅあ…うあ…う?」

 ゾンビドライバーにテストを渡したが、何やら悩んでいる。

 カチャッ…

「乗れってことかコラッ」

「理解されたのですわ、きっと」

「ハハハッ案ずるより産むが安し、乗ればいいのさ」

 タクシー2台が迷走の果てに止まった場所は神社であった。

「神社とかあったんですね」

「そうね、ゾンビに神社を案内されるとかシュールよね」

 桔梗嬢がカッとタクシーを降りる。

「お寺よりマシだろコラ」

「そうだね、RPGっぽい場所ですしね」

 遅れてやってきた秋季一行。

「ハハハッ暗黒騎士だが、神社とか? 大丈夫か?」

「鳥居潜ったら、毒ダメージとかなーアハハハッ」

 夏男(馬鹿)がバカ笑いしている。

「邪魔DEATH 毒DEATH‼」

 冬華にスパンッ‼と蹴られる左手の鹿。

 コッ♪

 ハイヒールの子気味いい音を立てて春奈嬢到着である。

 カッ、コッ、グリッ‼

 ヒールの踵で右手の馬を踏み抜く春奈。


(この男…前世で何をしたら、こんな業を背負うんだコラッ)

 夏男という人間に旋律を覚える青海であった。

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