第2話 どれすこ~ど

「アレか…」

 秋季が教室の後ろの窓から1年生の教室を覗き見る。

「男か…チッ‼」

 この時点で夏男の興味は0に落ちた。

「網に…入らないです」

(それは最初から解っていた)

 そう思った夏男だったが、特に言葉にすることはなかった。

 無駄だから。

 そして…背の低い冬華の踏み台になっていたから。

(何気に腰に来る…)

 ゾンビを前に教団に立つ『立花 桔梗ききょう』美人保健医である。

 学園を徘徊するゾンビに残飯を与えることを日課としている変わり種である。

「しかし、なかなかのインパクトだな新入生、心強い」

 教室の最後列、窓際にドカッと座る黒い特攻服を纏った男子。

「不良です‼」

「そうだな、アレで週末はボランティア活動は在り得ないな」

「盗んだバイクで走りだすです‼」

「そして夜の校舎で窓ガラスを壊して回るのだな」

 秋季が振り返ると廊下の窓が割れている。

「真実は常にひとつです‼ 犯人はアイツです‼」

 ズバッと教室の特攻服を指さしグキッと窓ガラスで突き指して夏男の背中に乗ったまま指を抑えてうずくまる冬華。

「それはゾンビの仕業じゃねぇか…というか腰が砕けそう…」

 ガラッと扉が開いて桔梗が怒鳴る。

「授業中にうるさいわよ‼」

「ほぉう、これは先生、授業とは?そもそも何の授業やら」

 秋季がズカズカと教室に入り黒板を見る。

「どれどれ…」

 冬華を馬乗りにさせたまま夏男も入ってきた。

「うん…ゾンビにAEDの使い方をレクチャーとは斬新だな」

「立花先生、一応一言、言っておこう」

「オマエは、もう死んでいるです‼」

 突き指した人差し指を再び特攻服に突き付ける冬華。

 人差し指は、ほんのり青く変色突き指している。

「誰に指差してんだコラァ‼」

「まったくよ、今年、唯一の生きてる新入生なのよ、彼は‼」

「新入生だぁ~? 先輩に対しての態度に問題があるんじゃねぇのか~? おー?‼」

 夏男が冬華を乗せたままカッポカッポと特攻服に近づく。

「なんだ、コイツは?」

 特攻服が立花先生に尋ねる。

「OBよ…ただの」

「じゃあ先輩じゃねぇじゃねぇか‼」

「残念ながらその通りだ‼」

 秋季が扇子をパンッと広げて胸を張る。

「冬華は先輩です‼ だから膝まずいて挨拶するです‼」

「俺に膝を付けだぁ~? オマエは俺より強ぇのか?コラッ‼」

「冬華は強いです‼ エクソシストです‼」

「エクソ…なに? どこのチームだコラッ‼」

「2年1組‼」

「冬華は日ノ本一の除霊士なのです‼」

「日本一だぁ~? 聞き捨てならねぇな~」

「ほぉう…ということはキミも除霊ができるのか?」

「ソレが、なんであれ、1番は譲れねぇなぁ」

「私も神を狩る者として1番は譲れんのだ…では、こうしよう、ゾンビ成仏で対決‼」

「上等だコラッ‼」


 かくして『ゾンビ成仏』という訳の分からない対決が開始されるのである。


(とりあえず…降りてくれないかな~)

 夏男の腰は限界を迎えていたという…。


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