続・ ゾンビが徘徊する世界で、こんな能力を持ってみたって、どうしようもねぇ…

桜雪

第1話 にゅ~わーるど

「いつまで通うつもりなんですか?秋季さん」

「ほほぉ、これは『佐藤 小太郎こたろう』生徒会長、おはよう」

 1年間の留年を経て、やっと卒業したと思いきや…未だに通ってくる『一ノ瀬 秋季しゅうき』。

 そして、当たり前のように生徒会室に居座っている。

「私の事は気にしないでくれたまえ、生徒会長をキミに譲ったのだ、そう…言うなれば今は…今は…う~ん…なんなのだろう?」

「言うなれば無職です…秋季さん」

 小太郎はすでに先輩と呼ばなくなっている。

 相手は卒業した無職なのだ。

 いくら生徒会長を2異例の猛者とはいえ、今は無職の人なのである。

「かといって行くとこも無いしな~」

 コチラも当たり前のように生徒会室へ入って来る『二階堂 夏男なつお』同じく生徒会書記から降格し庶務を約2年務めた剛の者である。

「であっても…どっかに行ってください‼」

「ほぉ~小太郎くん…2年生にして生徒会長になったからでしょうか~? 随分と偉そうに、おなりにならあそばせましたものですな~」

方言‼」

 小太郎のアイアンクローが夏男のこめかみに食い込む。

「痛い…痛たた…眼鏡が…眼鏡が割れるから…」

「問題あるまい、私も2年生で生徒会長だったのだから」

「まぁまぁ、ブレイクタイムにしましょう、はい梅こんぶ茶ですよ」

 相変わらずの、おっとり口調でお茶を差し出す『三宮寺 春奈はるな』3年生だが副会長継続である。

「冬華 梅こんぶ茶好きです‼」

 小太郎と同じく2年生『四方堂 冬華とうか』彼女は書記から会計へジョブチェンジした。

「うむ…相変わらずの面々…と言いたいところだが老婆心ながら言わせていただこう…書記は?」

「不在のままですが…なにか?」

「それは困ったものだな、よし、私が書記をやろう」

「まぁ、心強い」

 春奈がポンッと手を叩く。

「心配ご無用です、1年生から選びますから」

「……1年生?」

「まぁ入学してきた人がいらっしゃるの?」

「いるんです…驚いたことに」

「よしわかった‼ 俺が確認してきてやるぜ‼」

 夏男が妙に張り切っている。

「男か女かもわからないんですよ」

「冬華も行くです‼」

 なぜか虫取り網を装備した冬華。

「どうせ、暇なんでしょうからOBのお二人に任せますよ…」

「ほぉう…私も?」

「暇でしょ‼」

「ハッハハハ、否定するエビデンスが用意できるか?と言われれば用意できないが、ハッハハハ」

 秋季が高笑いしている。

「任せておけ‼ 女子なら逃がさないぜ…グフフッ…グフッ」

 夏男は含み笑い…。

 高笑いと含み笑いの暇人ズの後に、チョコチョコと網を持った冬華が付いていった。

「生徒会長も楽じゃありませんわね、辞退して良かったですわ」

「辞退すればよかったです」


 心の底から後悔している小太郎であった。

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