第2話 さよならなんて言いたくない




 さよならなんて言えない。言いたくない。


 駅のホームに、彼女が見送りに来たら、どうしようかと思った。


 彼女は自分では気が付いていないけれど、完治の見込みのない病を患っている。


 今は症状が出ていない。


 けれど、遠くない未来、彼女の病は彼女の体を蝕むだろう。


 だから俺は、治療法を見つけるために、医者になるためにもっと都会に行って、たくさん勉強しなければならない。


 本当は傍にいたかったんだ。


 一番近くで、見守っていたかった。


 でも、それじゃ救えない。


 だから、彼女が見送りにこなくてよかったと思っている。


 顔を見たら、きっとあの町にとどまってしまう。


 さよならなんて、言ってほしくないし。


 俺も言いたくなかったから。


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さよならの言葉と私達 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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